“見返りを求める心”(承認欲求)への対処法は?仏教で説かれる「人間の本質」を知る

人に親切をしたのに、お礼がなかったり、自分のがんばりを認めてもらえなかったりすると、イライラしたり、つらくなったりしますよね。

そんなイライラの悩みを解消し、相手と良好な関係を築いていくにはどうすればいいのでしょうか?

前回は、アドラー心理学の観点からは、まず「課題の分離」を実行し、「私は役に立てている」と感じる「他者貢献感」を持つこと、

また仏教の観点からは「三輪空寂(さんりんくうじゃく)」に心がけることが大切だとお話ししました。

前回の記事はこちら

お礼がないときのイライラを解消する!アドラー心理学から学ぶ、“見返りを求める心”(承認欲求)への対処法
人にせっかく親切をしたのに、思ったとおりのお礼がなくてイライラしたことはないでしょうか。 「上司から頼まれた仕事を終わらせたのに…」 「部下の頼み事を聞いてやっ...

今回は、「人間の本質」を知ることで見返りを求める心に対処できることをご紹介していきます。

記事の内容を動画でもご紹介しています

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人間は「自己中心的で、エゴに溢れ、感謝を知らない」

イライラを解消するヒントは、『道は開ける』(D・カーネギー著)のマルクス・アウレリウスの言葉から知ることができます。


マルクス・アウレリウス
(第16代ローマ皇帝)

アウレリウスは「人間の本質」について、こう語っています。

今日も私は、口やかましく自己中心的で、エゴに溢れ、感謝を知らない人びとと会うことになる。

だが、なんとも思わない。そうした人びとがいない世界など、あり得ないからだ

ちょっと悲しい気持ちにもなりますが、

「そもそも人間は自己中心的であり、感謝を知らない。感謝されることはないのだから、見返りを求めること自体が誤っている」

と思うことで、執着心(見返りを求める心)に振り回されずに済みます。感謝がなくても、イライラしたり、気に病んだりするようなことはなくなるのですね

そして、感謝を期待しなければ、仮に、ふと人から伝えられた感謝は大きな喜びになります

「見返りを求める心で悩まないためには、他者貢献自体をやめればいい」と思う人もいるかもしれませんが、それでは「貢献感」は得られませんね。相手との人間関係も良好にはならないでしょう。

他者貢献をしつつも、感謝を知らないのが人間の本質と受け止め、感謝を期待しない。
そうすることで見返りを求める心(承認欲求)を適切に対処できるでしょう。

反対に、もし自分が人に親切にしてもらったなら、欠かさずにお礼を伝えることが大切ですね。
お礼を伝えなければ、相手が相当自己受容している人でない限り、相手の勇気をくじいてしまいます

忘れずにお礼を言うことで、相手も自分自身も勇気を得て、お互いにより他者貢献へと踏み出していけるのです。

仏教で説かれる「自利利他」の精神

仏教でも人間の本性は「我利我利(がりがり)」であると教えられています。

我利我利とは、「我が利益、我が利益」ということで、自分の利益のみを優先する心をいわれます。
まさに人間は自己中心的で、エゴに溢れた存在なのですね。

ゆえに人間は何も心がけなければ、人からの親切を当然のことと受け流してしまい、感謝の気持ちを持つことはできないのです。

親切をする側に立てば、そもそも人間は我利我利なのだと受け止め、感謝を期待しないことが、余計な怒りに悩まされずに貢献感を得るポイントです

ただ、親切をされた側に立ったならば、「本性は我利我利だから、お礼を言えなくても仕方がない」と開き直ってはいけませんね。

相手からの親切は決して当たり前ではありません。むしろ人間の本性が知らされるほど、本当は我利我利であるはずの相手の親切な行為を素晴らしく思い、感謝を伝えずにはおれなくなるでしょう
ぜひ貢献してくれた相手の努力を労いたいですね。

我利我利の本性に対して、「自利利他(じりりた)」という言葉があります。

利他とは、「他を利する」ということで、他者に貢献する、他者を喜ばせる、ということです。
他者に貢献することで貢献感を持てて、自分自身が勇気を得ることができます。そのように、利他の行為はそのまま自利(自分を利する、自分が幸せになる)となるので、自利利他といわれるのです。

アドラー心理学で幸せになるために他者貢献感を持つことが勧められているように、仏教でもまた利他行が勧められています。

自分の幸せ、周りの人の幸せのために、少しでも利他の実践を心がけていきたいですね。

 

では具体的にどのような行為が利他の行為となるのでしょうか。どうすれば相手にもっと喜んでもらえるのでしょうか。

他者への貢献と聞くと、そんな大それたことは自分には難しいと思う方もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

仏教には、誰でも心がけさえあれば実践できる、素晴らしい利他行も教えられています。

それについて解説した記事もありますので、ぜひご覧になってください。

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まとめ

  • 「そもそも人間は自己中心的であり、感謝を知らない」という人間の本質を知ることで、感謝がなくても腹を立てたり、気に病んだりすることはなくなります。そして、ふと伝えられた感謝あ大きな喜びとなるのです
  • 自分が人に親切をしてもらったときは、欠かさずにお礼を伝えることが、良好な対人関係を築くために大切です
  • 仏教では人間の本性は「我利我利」、自分の利益のみを優先するのが人間と説かれています。人間は我利我利だと受け止めれば、悩まされずに貢献感が得られます。相手の親切な行為も素晴らしいと思えるでしょう
  • 「我利我利」の反対が「自利利他」です。他者に貢献するままが、自分の幸せになります

引用した書籍

道は開ける 新装版

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この記事を書いた人
南 雄一郎

2011年 金沢大学工学部 卒業

大学では機械工学を専攻するなか、悩み解消のヒントや生きる指針を教える仏教に強い関心を持ち、仏教講演会に多数参加しました。

また大学卒業後は仏教と親和性のある心理学にも興味を持ち、独学で学びました。

現在は東京都内でライターをしながら、対人関係の悩みを解消し、自立した生き方の実現を目的とした 仏教×心理学のワークショップを開催しています。

自主開催のワークショップは累計750回以上。

2018年 新潟県キャリアセンター様主催 キャリアコンサルタント フォローアップセミナーにて講師をつとめました。

NPC法人HMC協会 認定心理カウンセラー(セルフ資格) 。

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