「アドラー心理学には何が教えられていますか?」
と質問をされたら、どう堪えるでしょうか。
アドラー心理学関連の本を読んだことがある方も、なかなか答えづらいかもしれません。
それは、本を読んでみると、アドラー心理学特有の用語がたくさん出てきて、用語の1つ1つはよく理解でき、その奥深さに感動するものの、
「それらがどうつながっているか」
と言われるとイマイチはっきりとせず、モヤモヤとした気持ちになるからと感じます(あくまで個人的な思いであり、一読してスッキリわかった、という人もいると思います)。
ではアドラー心理学は一言でいうと、どんなことが教えられているのでしょうか?
記事の内容を動画でもご紹介しています
スポンサーリンク
アドラー心理学とは、“人間知の心理学”
ベストセラー『幸せになる勇気』には、以下のように説明されています。
アドラー心理学に「魔法」はありません。
ミステリアスな魔法よりも建設的で科学的な、人間への尊敬に基づく、人間知の心理学。それがアドラー心理学なのです。
(『幸せになる勇気』岸見一郎著 より引用)
アドラー心理学とは「“人間知”の心理学」といわれています。
では「人間知」とはどういうことでしょうか?
共同体のなかでどのように生きるべきなのか。
他者とどのように関わればいいのか。
どうすればその共同体に自分の居場所を見出すことができるのか。
「わたし」を知り、「あなた」を知ること。
人間の本性を知り、人間としての在り方を理解すること。
アドラーはこうした知のことを「人間知」と呼びました。
(『幸せになる勇気』岸見一郎著 より引用)
人間の本性や、人間としての在り方の知の体系が「人間知」なのですね。
もう少し噛み砕きますと、
人間は自分1人で生きていくことはできず、必ず他者との関わりができます。
その他者との関わりで悩んでいるのが私達です。
「思った通りに他者が動いてくれない」
「こんなことを他者からされて、苦しい、つらい」など。
そんな思い通りにならないなかで、
他者とどう関われば悩みをなくし、幸せに生きられるのか?
自分をどう認めれば、幸せに生きられるのか?
それらの知の体系が「人間知」であり、その「人間知」が教えられているから、アドラー心理学は「“人間知”の心理学」と呼ばれるのですね。
どんな生き方をしていても幸福になれるわけではない
「どう生きればいいのか」を教えていると聞くと、
「自分の好きなように生きていけばいい。それがいちばん幸せな生き方だ」
と思う人もいるかもしれません。
しかし『アドラー心理学実践入門』という本には、このように指摘されています。
ある食べ物をある人がおいしいといい、他の人がそうでないといっても、好みの違いでしかありません。
ところが、この食べ物は有用か有害かということになると、主観では決めることはできません。
幸福もこれと同じように、どんな生き方をしても幸福になれるわけではありません。
(『アドラー心理学実践入門』より引用)
味がおいしい食べ物があっても、それが有害なものなら、食べれば苦しむことになります。
「好きな食べものなんだから、これを食べているのがいちばん幸せ」とはならないですね。それは一時的な幸せに過ぎません。
生き方も同様に、自分の好きなように生きていても、その生き方が周りの人を苦しめるものであれば、やがては自分も周りの人に仕返しをされたり、見捨てられたりして苦しむことになってしまいます。
有用な生き方とはどんな生き方なのかは、教えてもらわないことにはわかりませんね。
人間とは何か。他者とどう関わっていくのか。そういう人間としての根本を踏まえた上で、長期的に幸せになれる生き方を示しているのがアドラー心理学なのですね。
幸せな生き方として
「叱ってはならない、ほめてもいけない」
「承認欲求を否定する」
「相手に勝とうとしてはならない」
など、自分が常識と思っていたこととは正反対と思われるようなことがアドラー心理学には多く教えられていて、目を見張った方も多いと思います。常識へのアンチテーゼ、といわれる通りですね。
それらは突飛なようで、実は人間知からいわれたことであり、内容を吟味すれば非常に理に適ったこととわかります。
ワークショップや、このサイトでの記事執筆を通して、人間知の心理学をご一緒に深く学んでいければと思います。
まとめ
- アドラー心理学は一言でいうと、「人間知の心理学」といわれます
- 人間知とは、人間の本性を知り、人間としての在り方を理解すること。噛み砕くと、人間とは何か、他者とどう関わっていくべきかを踏まえたうえで、長期的に幸せになれる生き方を教えているもののことです
- 「好きな生き方=幸せになれる生き方」ではありません。有用な生き方は教えてもらわなければわからず、それを教えているのがアドラー心理学です
引用した書籍
アドラー心理学 実践入門—「生」「老」「病」「死」との向き合い方 (ワニ文庫)
スポンサーリンク