「他者が自分の思い通りに動いてくれれば、こんなにヤキモキしなくてすむのに…」
このような思いを、毎日のように抱えられている方もいるかもしれません。
思うようにならない相手に嫌気が差し、ますます相手との関係が悪くなってしまうこともあるでしょう。
そんな対人関係の悪循環を止める方法をアドラー心理学から学んでみたいと思います。
記事の内容を動画でもご紹介しています
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人間関係で悩む人は他者を“敵”とみている
アドラー心理学では、人間の悩みはすべて対人関係の悩みである、と教えられています。
そう言われるのは、いろいろなことで悩んだり苦しんだりしているといっても、そこには必ず他者の存在があるからです。
その他者が自分の思い遠いに動いてくれれば、悩むことはありません。
しかし自分の都合よく振る舞ってくれる人なんて、いませんよね。
『アドラー心理学実践入門』ではこう語られています。
この相手は、当然のことながら、自分の意のままに動くわけではありませんから、自分にとってしてほしいことはしないで、してほしくないことをするということはよくあります。
そのような時、私たちは心穏やかでいるわけにはいかず、悩み、苦しむことになります。
(『アドラー心理学実践入門』より引用)
「自分にとってしてほしいことはせずに、してほしくないことをする」存在が現れたとき、私達はその相手を“敵”とみなし、敵からの攻撃に備えようとします。
他者を敵と思えば、自分の生きる世界は危険にあふれた世界と見るようになりますね。
『アドラー 人生の意味の心理学』の中で、
悩みを抱えてカウンセリングにくる人の多くは、他者のことを、隙あらば自分のことを陥れようとする怖い存在、さらにはこの世界全体を危険なところと見ています。
と書かれている通りです。
しかしここで1つ、疑問が出てきます。
果たして私達が敵だと思っている相手は、本当に敵なのでしょうか?
本当に周りは敵だらけで、世界は危険に満ちたところなのでしょうか?
傷つくのが恐いから、他者を敵と見なさなければならない
『アドラー 人生の意味の心理学』では、他者が本当に敵かどうかにかかわらず「私達自身が他者を敵とみなしている」と指摘されているのです。
なぜ彼らはそんなふうに(他者を恐い存在だと)思ってしまうのでしょうか。
「他者との関係の中に入っていきたくない」という目的があるからです。
他者と関われば、必ずそこには摩擦が生まれ、憎まれたり、嫌われたり、裏切られたりといったことが生じます。
そうなって傷つくのが怖いので、「他者と関わりを持たないようにしよう」と考えるのです。
そう思うために他者を敵と見なさなければならないのです。
(『アドラー 人生の意味の心理学』より引用)
「他者と関わることで嫌われたり、裏切られたりしたくない」、そういう思いが先にあって、その目的のために他者と敵をみなしているのですね。
そして他者を敵とみなすために、「あの人の××なところが好きじゃない」と、その人の欠点をあげつらうのです。
このように、「~したくない」という目的が先にあって、理由は後からついてくる考え方を「目的論」といいます。
目的論的にみると、根本的な問題は、「私が傷つきたくない」という思いや裏切られたくないという恐れにあるとわかります。
ただ、
「あらゆる点で相性が悪い」
「いろいろ努力はしたけれど、この人とはどうにも合わない」
という人もいると思います。
実際に、「2:7:1の法則」というものがあります。
2:7:1の法則
これはアメリカの臨床心理学者 カール・ロジャーズが提唱しています。
この法則は、仮にあなたの周りに10人の人がいたとして、
2人は無条件にあなたを好きになってくれる人、
7人は時々の都合によって味方になったり敵になったり、無関心であったりする人、
そして1人は、あなたを無条件に嫌う人、
というものです。
この法則によれば、どんなに努力をしても合わない人、好きになれない人は必ずいる、ということですね。
だから、相性が悪い人がいたとしても、「私が悪いのかな」と、自分を責める必要はありません。
そういう人には第三者に仲介に入ってもらって、接触はできる限り避けるのがいいでしょう。
しかしだからといって、「あの人もこの人も、それにその人も私は合わない」という人がいれば、その見解は疑わしいです。自分が他者と関わりたくないから、相手を敵とみなしている可能性が高いですね。
他者を“敵”ではなく“仲間”とみなす方法
それでは他者を敵ではなく、仲間とみなすにはどうすればいいのでしょうか?
そのアプローチとして有効なのが、「他者の欠点ではなく、長所を見つける」ことです。
他者の欠点ではなく、長所を見つける
私達は他者の欠点に注目をしてしまいがちです。
「あの人の癖を教えて」と言われれば、いくらでも出てきますね。
ところが「長所を教えて」と言われると、よほど尊敬している人でない限りは、なかなか思い浮かばないと思います。
アラ探しは得意なのですが、長所を見つけるのは苦手なのですね。
しかし欠点ばかりを見つけては、関わらないための言い訳を増やしていき、相手は敵であり続けます。
なので、他者の欠点ではなく、長所に注目していきたいです。
あの人にはこんな良いところがある、と思えば、他者の見方が変わっていきます。
更なるアプローチ法:ラベルの貼り替え
「いやー、あの人には長所なんてないよ。欠点ばかりだ」と思う人もいるかもしれません。
そういう人はどう見ればいいかについて、アドラー心理学のパイオニアである野田俊作さんは、こうアドバイスされています。
暗い部分と明るい部分とは、欠点と長所とは、実は同じものなんです。
違うものではない。ただ名前が違うんです。
同じものでも違う名前をつければ違う使い方が発見できる。
短所と長所は別々のものではなく表裏一体であり、名前が違うだけ。だからラベルを張り替えればいい、と野田さんは指摘されているのですね。
仮に、自分の性格が暗くて悩んでいる人がいたとします。
あなたなら、暗い性格を、どのように言い換えて、相手を励ますでしょうか?
なかなか難しいですね…。
野田さんはそんな性格の人に対し「思いやりが深くて、謙虚で、感受性が豊かで、親切」と言われるそうです。まるで別人のことを言っているみたいですね笑
しかしそう言えば、相手も満更でもないと思って元気がでるでしょうし、自分の相手への見方も変わってくるでしょう。
ほかにも、
気が小さい人は「慎重で、軽率な行動をしない」
頑固な人は「意思が強い」
融通の利かない人は「几帳面でしっかりしている」
などと、ラベルの貼り替えができます。
ぜひ短所を長所と見て、他者を仲間とみなし、良好な関係を築いていきたいですね。
まとめ
- 相手が自分にとってしてほしいことをせず、自分のしてほしくないことをするとき、私達はその相手を“敵”と見なします
- 他者を敵と見なすのは、「他者と関わることで傷つくのを避けたい」という目的があるからです(10人に1人の自分を無条件に嫌う人は除きます)
- 他者を敵ではなく仲間と見るには、欠点ではなく長所を見つけることです。短所と思えることもラベルを貼り替えることで、相手への印象を変えることができます
引用した書籍
アドラー心理学 実践入門—「生」「老」「病」「死」との向き合い方 (ワニ文庫)
NHK「100分de名著」ブックス アドラー 人生の意味の心理学―変われない? 変わりたくない?
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