勉強会主催の みなみ です。
今回のワークショップには初めての方4名を含む、6名の方が参加されました。
令和最初のワークショップで、新たな出会いもあり、気づきもありで、充実した時間を過ごすことができ、参加された方に感謝の思いです(>_<)
参加されたある方は、職場での人間関係の改善に役立てないかと思って来られたそうです。お話をお聞きし、人を変えることの難しさを痛感します。
ワークショップでお話ししたことが少しでもその改善に役立てていただければと思うとともに、自分自身もより良い考え方、方法を模索していきたいと感じました。
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アドラー心理学の驚くべき見解「トラウマを否定せよ」
今回のテーマは、
アドラー心理学に学ぶ「トラウマを否定する“自立した生き方”」
についてでした。
アドラー心理学が広く知られるようになったきっかけが、ベストセラー『嫌われる勇気』ですね。
その『嫌われる勇気』を読んで、まず衝撃を受けるのが「トラウマを否定せよ」という考え方でしょう。
『嫌われる勇気』のなかに登場する青年が、何年も自室に引きこもりになっている友人がいることを話題にします。
その友人はいまの自分を変えたいと思っているが、いざ自室を出ようとすると、動悸が始まり、手足が震えて、出ることができなくなってしまう。これはおそらく、いじめや虐待などがトラウマとなって出られないのだろうと、青年は自分の考えを話します。
この考えは、過去のトラウマによって、いまの行動が決定されるという「原因論」的な考えであると、物語に登場する哲人は指摘します。
「現在の私は、過去の出来事によって規定される」というのは当たり前のことだと、多くの方が考えていると思います。
しかし、もしそうであるならば、両親から虐待を受けて育った人はみな、青年の友人と同じように自室に引きこもってしまう、ということになります。
けれどそのような生い立ちの方がみな自室から出れなくなる、ということはありませんね。原因論的な考えでは辻褄が合わなくなってしまう、と哲人は言うのですね。
この「トラウマが行動を決定づける」という原因論の考えに対して、アドラー心理学では「私達にはまず目的があり、その目的に適うように行動する」という「目的論」が提唱されています。
目的によって行動は決まる?アドラー心理学の「目的論」
アドラー心理学では、原因論は否定され、「目的によって行動は決まる」と教えられています。
先の例でいえば、青年の友人には「外に出ない(自室に引きこもることで親に心配をしてもらえる、注目を一身に集め、丁重に扱ってくれる)」という目的がある、
その目的を達成する手段として「不安や恐怖という感情をつくり出している」と説明されています。
青年がびっくりして強く反発したように、感情をつくり出している、という説明に驚かれた方も少なくないでしょう。
突飛な考えのように思いますが、確かに原因論的な考えでは、過去に同じようなことを経験した人すべてが同じような行動を取るという結論に至ってしまうので、こちらのほうこそ矛盾があるといえるのですね。
アドラーは、原因論を否定するなかで、
いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。
われわれは自分の経験によるショック──いわゆるトラウマ──に苦しむのではなく、経験の中から目的に適うものを見つけ出す。
と語っています。
過去の経験それ自体は原因ではなく、まず目的があり、その目的に適うものを過去から見つけ出して独自の意味を与えている、と言われているのですね。
前回は、赤面症の女性の悩みを例に、問題の本当の原因はその女性の目的にあることをお話ししました。
前回の記事はこちら
今回は、もう1人、別の女性の具体的な悩みを通して、目的論的な見方をお話ししていきます。
恋愛の成就が困難な相手を選んでいる?告白できない本当の原因
『週刊ダイヤモンド 2016年7/23号』にてアドラー心理学が特集され、そのなかで『嫌われる勇気』の著者である岸見一郎さんが、ある女性の悩みに解答されていました。
その悩みとは、以下のものです。
私には、今好きな人がいます。10歳以上も年下のイケメンで、背もすごく高くて、昔から好きになるのは年下ばかりで、しかも私、すごい面食いなんです(笑)
そのせいか、彼の前では異様に緊張して、動悸が止まらない。嫌われるのが怖い。
(46歳・女性)
みなさんなら、どう答えられるでしょうか。
この女性は、ずっと年下の人を好きになってしまい、しかも面食い。そうなるとその人の前では緊張して動悸が止まらない、こんな私はきっと相手から嫌われるに違いない、と言われています。
これは、私は年下のイケメンを好きなってしまう、そういう性質だからうまくいかないんだ、という原因論的な見方をしているといえますね。
これを目的論的に見れば、この女性には「嫌われるのが恐い。拒絶されたくない」という目的が先にあり、だからこそ緊張や動悸という症状をつくり出している、といえるでしょう。
岸見さんはさらにこのような見方もされています。
あなたは告白して傷つきたくないから「年下のイケメンだから」と、恋愛が成就しなかったときの言い訳を用意しているのです。
そのために、恋愛の成就が困難な相手を選び、「私は最終的に失恋する」という悲劇のストーリーを、一人で勝手に作り上げているのです。
かなり厳しい見方と感じられるかもしれませんが、「告白して傷つきたくない」という目的のために症状をつくり出し、またうまくいかなったときに自分に言い訳をするために、恋愛の成就が困難な相手を選んでいる、というまさに目的論的な見方をされています。
「告白して傷つきたくない」という目的こそ、悩みの本当の原因といえるのです。
原因論的な見方をすれば、相手との仲は進展せず、仮にうまくいかなかったとき、「私はもともとこういう性質だから、うまくいくはずがない」と自分を正当化し、前向きな考えや行動はしなくなってしまうのですね。
ここまで原因論的な見方と、目的論的な見方とに分けてお話をしてきました。
次回からは、原因論でものごとを考えるときの問題点を詳しく見ていきます。
まとめ
- 「トラウマによって今の行動が決定される」という考えは原因論といわれます。しかしアドラー心理学では原因論は否定され、「私達には目的があり、その目的に適うように行動する」という目的論が提唱されているのです
- 過去の経験それ自体に私達は引っ張られるのではなく、まず目的があり、その目的に合うように過去の出来事に意味づけをしているのです。家から出られない男性の例でいえば、「外に出ないことで、周囲から心配してもらいたい」という目的があり、その目的のために過去を不可侵のトラウマとしている、といえるのです
- 好きな人の前だと異様に緊張してしまう、年下のイケメンばかりを好きになってしまう、というのも、「告白して傷つきたくない」という目的があり、その目的のために「異様に緊張する、年下のイケメン好き」という言い訳を用意している、と指摘されています
続きの記事はこちら
参考にした書籍
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