「仏教を聞き学ぶ目的は何でしょうか?」と聞かれれば、
その答えは「抜苦与楽(ばっくよらく)」といえます。
仏教は人間の苦しみを抜いて、福楽(=幸福)を与えるために説かれたので、「抜苦与楽」が仏教を聞き学ぶ目的なのですね。
例えるなら仏教は、最先端の医学にも似た処方箋であり、人間の苦しみの原因は何であるかということ、そして苦しみの治療法が教えられている、ともいえるでしょう。
ではその苦しみの元は何かといえば、それは「無明(むみょう)」であり、「煩悩(ぼんのう)」であるということまで前回、お話ししました。
前回の記事はこちら
煩悩は、私たち人間を煩わせ、悩ませるもので、全部で108つあるといわれています。
そのなかでも、特に私たちに罪を造らせ、苦しめる「三毒」という煩悩があります。
「三毒」とはどのようなものか、また「三毒」に対処するにはどうすればいいか、ご紹介していきます。
記事の内容を動画でもご紹介しています
スポンサーリンク
“毒”のように私たちを苦しめる「三毒」とは?
京セラ、KDDIの創業者であり、仏教を経営指針に取り入れていることでも有名なのが稲盛和夫さんです。
その稲盛さんが「三毒」についてこのように語っています。
大事なのは、できるだけ「欲を離れる」ことです。
三毒を完全に消すことはできなくても、それを自らコントロールして抑制するように努めること
より良く生きていく上で、三毒は完全になくすことはできなくても、それを抑制するように努めることが重要だといわれています。
その「三毒」とは、
- 貪(とん)
- 瞋(じん)
- 癡(ち)
の3つです。
貪は、貪欲(とんよく)のことで、限りのない欲の心をいいます。
瞋は、瞋恚(しんに)をいい、これは怒りの心のことです。
癡は、愚痴のことで、恨みや妬みの心のことを指します。
これらが三毒です。
そもそもなぜ「毒」なのかというと、毒が体内に入れば、その毒のために苦しみます。
夏場になると、食中毒が流行します。食中毒にかかれば、その毒によって苦しまなければなりません。
そのように、貪・瞋・癡によって私たちは苦しみ、悩むため、毒のような心といわれるのです。
代表的な5つの欲-「五欲」とは?
はじめの貪は、貪欲ともいわれ、欲の心のことでしたね。
欲といっても、いろいろな欲があります。
食欲や物欲、承認欲という言葉は日常で耳にすることもあると思います。
仏教ではそのいろいろな欲を5つにまとめて教えられています(「五欲(ごよく)」といいます)。
その5つは
- 財欲(ざいよく)
- 色欲(しきよく)
- 飮食欲(おんじきよく)
- 名誉欲(めいよよく)
- 睡眠欲(すいみんよく)
です。
①財欲
お金がほしい、財産がほしい。また、損をしたくない、という心のことです。
②色欲
男性なら女性を、女性なら男性を求める欲のことです。
③飮食欲
おいしいものが食べたい、飲みたいという心です。
④名誉欲
「ほめられたい、認められたい」
「悪口を言われたくない」
という名誉を求めたり、プライドを傷つけられたくない心のことです。
⑤睡眠欲
眠たい、寝ていたい。また、楽がしたい、という心のことです。
人間は一日中、欲に動かされている?
人によって強く表れたり見せないようにしたりしていますが、どんな人にも五欲があります。
この欲を満たすために私達は一日中動いている、と言っても言い過ぎではないでしょう。
朝起きれば「眠たい、まだ寝ていたい」と睡眠欲が起こります。
眠たいのを我慢して起きるのは、「会社に行って、仕事をしないことには給料をもらえない」という財欲や、「遅刻して、恥をかきたくない」という名誉欲が動くからですね。
顔を洗ったり、ヒゲを剃ったり、化粧をしたり、服装に気を使ったりするのは、これも名誉欲(または色欲)があるからですね。
名誉欲などなければ、どんな格好で外に出ようが気にすることはないでしょう。
会社で一生懸命、仕事をするのは、「成果を出して、昇給したい」という財欲や、「成果を出して出世をし、周囲から認められたい。名声を得たい」という名誉欲があるからですね。
反対に、いかに手を抜いて過ごすかを考えている人は睡眠欲の強い人といえるでしょう。
お昼になるとお腹が空いて「食べたい」と思うのは飮食欲ですね。
コスパの高いランチを食べたいと思うのは飮食欲とともに、財欲も動いているといえます。
ただ、食べ過ぎには気をつけたい、太るのはイヤだ、と思うのは名誉欲(あるいは色欲)ですね。
ボリューミーなランチを頼めば飮食欲の勝利ですし、
カロリー抑えめなランチを頼んだなら名誉欲の勝利ということですね。
ランチを食べ終えて、仕事を再開すると、猛烈に眠くなることもあります。これは睡眠欲ですね。
仕事が終わって
「おいしいものを食べに行こう」という人は飮食欲、
「投資について学べるセミナーに参加してしよう」という人は財欲、
「エステに行こう」という人は名誉欲(あるいは色欲)、
「今日はもう疲れたから、早く家に帰って休もう」という人は睡眠欲で動いている人です。
このように、1日を振り返ると、欲に振り回されっぱなしだと実感しますね。
仏教を説かれたお釈迦様は「大無量寿経」というお経の中で、
心のために走せ使われて、安き時有ること無し
といわれています。
心とは欲のことです。欲のために使いっ走りをさせられ、安き時(「心から安心した」と言える時)が死ぬまでない、という意味です。
欲を満たすために、日々、あくせくしている人間の実態をズバリ、おっしゃっていますね。
この欲にはほかにも特徴があります。
次回は、その欲の特徴についてお話ししていきます。
まとめ
- 仏教では、苦しみの元は「無明=煩悩」であると教えられています。煩悩のなかでも特に私たちを苦しめる3つの煩悩は「三毒」といわれています。三毒はなくすことはできませんが、抑制することがより良く生きていく上で重要です
- 三毒は、貪・瞋・痴の3つで、それぞれ欲の心、怒りの心、恨み・妬みの心のことです
- 欲の心は5つにまとめて教えられています(=五欲-財欲、色欲、飮食欲、名誉欲、睡眠欲)。これらの欲を満たすために私たちは1日、振り回されています
続きの記事はこちら
関連記事はこちら
スポンサーリンク