過去に縛られる人は不幸を必要としている?『幸せになる勇気』にみる「悲劇という安酒」

過去に起きた出来事を引きずってしまう、忘れられずに苦しくなる、ということはないでしょうか。

過去のことも思い悩むことなく、むしろ教訓とすることができれば、苦しみを解消し、前を向いて歩んでいくことができますね。

それにはどうすればいいのか、アドラー心理学の観点から学んでみましょう。

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過去に縛られている人は、自らが不幸を必要としている人

ベストセラー『嫌われる勇気』の続編として、こちらもベストセラーとなった『幸せになる勇気』に、過去の出来事の捉え方についてこう書かれてあります。

いかなる人間も、順風満帆な人生を歩むわけではないでしょう。

誰にだって、悲しい出来事もあれば挫折もあり、歯噛みするほど悔しい仕打ちにも遭っている。

それでは、どうして過去に起きた悲劇を「教訓」や「思い出」として語る人もいれば、いまだその出来事に縛られ、不可侵のトラウマとしている人がいるのか?

(『幸せになる勇気』岸見一郎著 より引用)

誰しも、何かしらの悲しい出来事や挫折を味わったり、悔しい仕打ちにあったりしたことがあるでしょう。

その出来事を引きずり精神を病んでいる人もいれば、それを「教訓」として前を向いて歩みを進めている人もいます。

なぜそのような違いが起きるのでしょうか。

『幸せになる勇気』に続けてこういわれています。

これは過去に縛られているのではありません

その不幸に彩られた過去を、自らが必要としているのです

(『幸せになる勇気』岸見一郎著 より引用)

アドラー心理学では、過去の悲しい出来事(トラウマ)によって未来が決定される、という考えが否定されています。

トラウマが今の自分にまったく影響を与えていないわけではありません。
しかし、過去に縛られる、ということはないのです。

すべての人が過去に縛られるのであれば、それを「教訓」や「思い出」として語れる人はいないはずですね。

ではなぜ過去に縛られているように思う人がいるのかというと、それは縛られているのではなく、自らが不幸を必要としている、といわれているのです。

不幸な過去を必要とするのは、不遇なる「いま」を忘れるため

どうして不幸に彩られた過去を必要とするのでしょうか。

それは、「過去にこんなことがあった。だから私の人生はうまくいかないんだ」と、いまがうまくいかないことを過去や人のせいにできるからですね

悩んでいれば、いまを忘れられ、前へ進まなくて済みます。前に進まないために、悩んでいるのです。

不幸に彩られた過去を必要としている人についてさらに、

あえて厳しい言い方をするなら、悲劇という安酒に酔い、不遇なる「いま」のつらさを忘れようとしているのです

(『幸せになる勇気』岸見一郎著 より引用)

とまでいわれています。

「いま」の辛さ、不遇さを忘れるために、悲劇という安酒に酔っているとは、本当に厳しい言い方ですね。

安酒に酔っているときは現実逃避ができますが、いったん酔いが覚めてしまえば、現実の苦しみがまた迫ってきます。
現実の問題は何も解決していませんし、それどころか放置し続ければ、より状況が悪化してしまうでしょう。

それと同様に、不幸を必要とし、過去や人のせいにしたところで状況は改善しません。
むしろ周りの人たちは嫌気が差し、離れていってしまうでしょう。

アドラーは、

過去の原因は『解説』にはなっても『解決』にはならないだろう

と語っています。

「いま」の不遇を、いかに最もらしく解説できたところで、それは解決にはなり得ません。

いまの不遇を変えるには、過去を呪うことなく、今一歩、新たに踏み出すことですね

過去を教訓にするには、「私にできることは何か」を問いはじめる

ではどうすれば、新たな一歩を踏み出せるのでしょうか?

まず今までお話ししてきた通り、私達は過去に縛られることはない、未来を決定づけるようなトラウマは存在しないと認めることですね。

これを認めること、自らの人生には自らに責任があると認めることは並大抵ではないと思います。
どうしても他人を恨みたくなることもあるでしょう。

しかし人をいくら恨んでも、事態は決して良くなりませんね。

今、自分には共同体に対して何ができるかを考え、そのことに集中する(これをアドラー心理学で「課題の分離」といいます)ことで、対人関係も激変し、必ず明るい未来が開かれるでしょう

「『私にできることは何か』を問いはじめる」ことが、悲劇という安酒を断つ第一歩です。

共同体のためにできることを考え、実行していけば、かならず現状は上向いていきます。そうなれば他人のために役立てた、貢献できたという感覚(他者貢献感)を持つことができ、自分の価値を感じ、自信が湧いてきます。

するとますます他者貢献のための活動をがんばろうと思えますね。

そうして幸せな気持ちになって過去を振り返れば、「過去のあの出来事も、自分には必要なことだったんだ」と、過去の出来事を教訓とすることもできるのですね。

ぜひ周囲への貢献への第一歩を踏み出してみてください。きっと素晴らしい気づきを得られると思います。

まとめ

  • アドラー心理学では、過去の出来事によって未来が決定される、という考えは否定されています。過去に縛られていると思っている人は、いまの苦しみから目を逸らすために自らが不幸を必要としているのです
  • 『幸せになる勇気』では、過去の不幸を必要としている人は、不遇なるいまのつらさを忘れるために悲劇という安酒に酔っている人、といわれています
  • 自分がいま受けていることは自分に責任があると認め、「いま、私にできることは何か」を問うて行動することで、悲劇の安酒を絶ち、明るい未来へ進むことができます。そうなれば、過去の出来事も教訓として振り返ることができるのです

引用した書籍

幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

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この記事を書いた人
南 雄一郎

2011年 金沢大学工学部 卒業

大学では機械工学を専攻するなか、悩み解消のヒントや生きる指針を教える仏教に強い関心を持ち、仏教講演会に多数参加しました。

また大学卒業後は仏教と親和性のある心理学にも興味を持ち、独学で学びました。

現在は東京都内でライターをしながら、対人関係の悩みを解消し、自立した生き方の実現を目的とした 仏教×心理学のワークショップを開催しています。

自主開催のワークショップは累計750回以上。

2018年 新潟県キャリアセンター様主催 キャリアコンサルタント フォローアップセミナーにて講師をつとめました。

NPC法人HMC協会 認定心理カウンセラー(セルフ資格) 。

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