人生にはどうしても悩み、苦しみがつきものですね。
そもそも人間は、どうして悩むのでしょうか。
アドラー心理学では、「ある目的のために人間は悩みを使っている」といわれています。ではその目的とはなんなのでしょうか?
悩みを解消するには具体的にどうすればいいのか?
人間の悩みの実態と、悩みの解消法を、アドラー心理学の観点からお話ししていきます。
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人間の悩みの実態とは?「決断を遅らせるために悩んでいる」
「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と、アドラー心理学では教えられています。
アドラーが指摘している通り、職場でも家庭でも、人間関係の悩みは絶えませんね。
しかしその悩みの実態について、『困った時のアドラー心理学』では、このようにも書かれています。
苦しいから前に進めないのではなく、前に進まないために悩むのだ、と。
前に進まないでおこうという決心が先にあって、悩むのはその決心がやむをえないと思えるためであるとアドラーは考えるのです。
(中略)
なぜ悩むのでしょう。
端的にいえば、決めないためなのです。
選びうる複数の選択肢があって、その中のいずれかを選ばなければ一歩も前に進めないことがあります。
それにもかかわらず、決断を遅らせるために悩むのです。
悩んでいる限り決めなくてもよいのです。
(『困った時のアドラー心理学』より引用)
悩まざるを得ないから悩んでいるのではなく、「そもそも人間には悩みはない、悩むのには目的がある」ともアドラーは指摘しているのですね。
このように「私たちは何かしらの目的があって、いまの行動を選択している」ことを「目的論」といいます。
目的論からいえば、悩むのにも目的があるといえます。
その悩みの目的とは決めないため、決断を遅らせるためなのですね。
決断を先延ばしにできるだけでなく、悩んでさえいれば周りから責められることはありませんし、「あなたもいろいろなことで悩んでいて大変ね」と、同情さえしてもらえるでしょう。
しかし決断を遅らせるために悩んでいて、それで物事はうまく進むでしょうか。
決断しないがために、ますます状況が悪くなり、さらに決断を先延ばしにするために悩む、という悪循環に陥ってしまいかねません。
悩み続けるあなたを、最初は同情していた周りの人も、やがてはうとましく思ってしまうでしょう。
これでは、相手にも周りの人にも迷惑をかけて、自分自身も不幸になってしまいますね。
「『私にできることは何か』を問いはじめる」ことが悩み解決の第一歩
悪循環から抜け出すには、誰の問題かを分離し、自分にできることは何かを考え、実行に移すことです。
アドラー心理学のパイオニアである野田俊作さんは、悩みの解決法をこう語っています。
人が変えられるのは自分自身だけなんだから。
誰の問題かを分離するということは、「悪いあなた、かわいそうな私」をやめて、「私にできることは何か」を問いはじめるということなんです。
(『グループと瞑想(アドラー心理学を語る2) 』より引用)
相手を責め、相手を変えようとしている間は、事態は好転しません。むしろ、相手との関係が悪化し、状況はより悪くなるでしょう。
だから「私にできることは何か」を問いはじめることが、「悪いあなた、かわいそうな私」という考えをやめることになり、悩みの悪循環から抜け出す第一歩になるのです。
「私にできることといっても、何かわからない」と思うかもしれませんが、複雑に考える必要はありません。悩みの解決方法はたくさんあります。
たとえば、
- 自分から挨拶をする
- 相手に優しく声をかける
- 記念日にプレゼントを贈る
- 相手をののしるのではなく、思い切って甘えてみる
- 相手の事情を知る努力をする
などなど。
あなたの態度の変容ぶりに、「急にどうしたんだ?さては、何か裏があるに違いない」と、相手は最初は不審の表情を浮かべるかもしれません。
けれど事態の改善を願って根気よく続けていけば、強硬だった相手の態度も次第に軟化していくでしょう。
ただ、どうしても性が合わなかったり、関係性が堕ちるところまで堕ちてしまったりした人もいますよね。
そのときは、第三者に間に入ってもらって誤解を解いてもらったり、直接のコミュニケーションを避けたりすることをおすすめします。
まとめ
- アドラー心理学では「そもそも人間には悩みはない、悩むのは目的がある」と教えられています。その目的とは「決めないため、決断しないため」です。悩んでいれば、決断を先延ばしにでき、周りから責められることはなくなります
- 悩み続ければ、はじめは同情していた人も、やがてはうとましく思ってしまいます
- 悩みを解決するには、「私にできることは何か」を考え、それを実行に移すことです。事態の改善に願って根気よく続けていけば、相手の態度も次第に良くなっていくでしょう
引用した書籍
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