「あなたは◯◯だ」
と人からイメージを押し付けられて、イヤな思いをしたことはないでしょうか?
「もう先輩なんだから、入社◯年目なんだから」
「男なんだから、女なんだから」
という発言をされるとイラッとしたり、悲しい気持ちになったりしてしまいます。
アドラー心理学的な観点からいえば、これは課題への介入であり、相手との信頼関係が揺らぎ、崩壊しかねない言動です。
こんな発言をされたときの対処法を紹介します。
記事の内容を動画でもご紹介しています
スポンサーリンク
課題に介入すると、対人関係のトラブルが起きる
「あなたは◯◯だ」という決めつけに対して、『アドラー心理学実践入門』にはこのように書かれています。
例えば、親が子どもについて「あなたはこんな子だ」とその性質を決めてしまう時(これをレインという精神科医は「属性付与」と呼んでいます)それは事実上、「命令」になってしまうということです。
「あなたはいい子ね」と親が子どもにいう時、その言葉は、「あなたはいい子でありなさい」という命令です。
(『アドラー心理学実践入門』岸見一郎著 より引用)
相手の性質を決めてしまうことを「属性付与」といわれ、それは事実上の命令になってしまうと指摘されています。
アドラー心理学には「課題の分離」ということも教えられています。
「課題の分離」とは、自分の課題とは何か?と問い、相手の課題には介入しない、というものです。
たとえば、勉強をしない子供がいたとします。
課題とは「それをしなかったら最終的に誰が責任を取るのか」というものです。
この場合、子供の課題は、勉強することですね。勉強しないことで成績が悪くなってしまい、先生に怒られるのは子供です。
そして、課題への介入とは、親が子供に「勉強しなさい」と言うことです。
親に「勉強しなさい」と言われた経験はないでしょうか?
一度は経験ある、という方がほとんどだと思います。
そのときに、「よし、親にそう言われたから、がんばって勉強しよう!」という気持ちになったでしょうか?
そうはならないですよね…。
むしろ、「今からちょうどやろうと思っていたのに、その一言でやる気がなくなった」と思うのではないでしょうか。
「勉強しなさい」というのは命令であり、課題の介入ですね。
たとえ親と子供の関係であったとしても、親が上からものを言うこと、良い悪いの判断を押し付けることは子供の自発的な行為を妨げてしまうため、アドラー心理学の観点では好まれません。
このように、課題への介入は親子関係のみならず、さまざまな対人関係のトラブルを引き起こすのだと、『嫌われる勇気』の中でも指摘されています。
およそあらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと―あるいは自分の課題に土足で踏み込まれること―によって引き起こされます。
課題の分離ができるだけで、対人関係は激変するでしょう。
(『嫌われる勇気』岸見一郎著 より引用)
相手の課題には介入せず、自分の課題にも介入させない。
課題の分離ができれば、対人関係は激変し、トラブルを避けることができるようになるのですね。
属性付与への対処法-他者と自分の間に境界線を引く
属性付与に話を戻すと、
「あなたは◯◯だ」と相手を決めつける属性付与も命令であり、課題への介入であるので、相手を傷つけ、対人関係のトラブルを招きます。
だから属性付与はやるべきではありませんし、自分がされたとしてもその属性付与に従う必要はありません。
『アドラー心理学実践入門』ではこう励まされています。
このような親をはじめとする他の人からの属性付与を受け入れる必要はありません。
他の誰が何といおうと、自分はこうだ、といっていいと思うのです。
人の期待に合わせたり、期待を満たすために生きているわけではないからです。
(「アドラー心理学実践入門」より引用)
他者のニーズを無視するような自分勝手な振る舞いをしてはいけませんが、必要以上に他者の言うことに従ったり、過敏になったりしなくてもいいのですね。
仮に、他者が私利私欲のためにあなたを利用しようと思っているなら、そんな人の期待に合わせようとすれば、あなた自身が悩み、苦しむことになってしまいます。
また、他者からの評価=自分の存在価値、と思ってしまうのも危険です。
他者からの評価を気にし過ぎるあまり、自分自身を追い詰め、常に心は不安な状態になってしまうのです。
他者からの評価を気にしてしまいがちな方は、他者からたとえ悪く言われたとしても、それが自分の価値のすべてではない、自分のことを好きになってくれる人も必ずいる、と思っていただきたいです。
時には『嫌われる勇気』にある
お前の顔を気にしているのはお前だけだよ
の言葉を思い出して、他者は自分のことで精いっぱい、他者の評価は大してあてにはならない、と開き直るぐらいでもいいでしょう。
このように、他者からの属性付与≠自分の価値 と思う、相手と自分との間に境界線を引くことで、属性付与にイラッとしたり、傷ついたり、他者の評価を気にし過ぎて苦しむこともグッと少なくなると思います。
ただ、自分のことを受け入れていないことには、自己受容ができていないことには、「他の誰が何といおうと、自分はこうだ」とは、なかなか思えないでしょう。
他者の評価に振り回されずに、「自分はこうだ」と胸を張れるための『自己受容』の方法については、別の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ続けてご覧ください。
まとめ
- 「あなたは〇〇だ」と決めつけることを「属性付与」といわれます。こういった決めつけや命令は、アドラー心理学では課題への介入にあたり、言われたほうは傷つき、勇気がくじかれます
- 属性付与はやるべきではなく、また従う必要はありません。人は、他者の期待を満たすために生きているのではないため、「自分がこうだ」と言っていいのです
- 属性付与に従って他者の期待を満たそうとすれば、他者に利用されたり、自分の存在価値が揺らいで心が不安定な状態になったりしてしまいます。ゆえに気持ちを安定させるには、他者と自分との間に境界線を引くことが大切です
引用した書籍
アドラー心理学 実践入門—「生」「老」「病」「死」との向き合い方 (ワニ文庫)
スポンサーリンク