自己正当化で悪循環に?箱の中に入ることの3つの問題点-箱の心理学に学ぶ 人間関係の悩み解決のメソッド5

勉強会主催の みなみ です。

ベストセラー書『自分の小さな「箱」から脱出する方法』を通して、人間関係の悩みを解消するメソッドをご紹介しています。

今回はその5回目です。

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あらゆる人間関係の問題の原因は、たった1つ?

『自分の小さな「箱」から脱出する方法』には、あらゆる人間関係の問題は、自分が「箱」に入っていることが原因である、といわれています。

自分の小さな「箱」から脱出する方法

「箱」というのは「自己欺瞞」「自己正当化」のことを表しています。

自分を正当化して相手を責めている、心が敵対的な状態のことです。

心が敵対的であることから あらゆる人間関係の問題が生じている、といわれています。

前回は、「箱」の法則の由来である 哲学者マルティン・ブーバーの提唱した「人間の2通りの存在の仕方」についてお話ししました。

前回の記事はこちら

「我-汝」「我-それ」という2通りの存在の仕方とは-箱の心理学に学ぶ 人間関係の悩み解決のメソッド4
勉強会主催の みなみ です。ベストセラー書『自分の小さな「箱」から脱出する方法』を通して、人間関係の悩みを解消するメソッドをご紹介しています。自分の小さな「箱」...

今回は、箱に入ることで生じる具体的な問題点をご紹介していきます。

以下が、箱に入ることの3つの問題点です。

箱の中に入ることの問題点

  1. 箱の中に入ると、周りの世界を、自分を正当化する視点から見る
  2. 自分を正当化する視点から見るようになると、現実を見る目がゆがめられる
  3. 他の人たちも箱の中に入れてしまう

「箱」の中に入ることで起きる、3つの問題点

問題点① 自分を正当化する視点から見る

「箱」というのは「自己欺瞞」であり、「自己正当化」を表したものとお話ししました。

箱の中に入るとは、「自分は悪くない自分は被害者だ」と思うことです。

すると、相手のことは「自分に被害をもたらす人加害者だ」と見なします。

自分のことは悪いとは思わず、
「勤勉」
「本当は重要な存在だ」
「正しいことをやっている。公正だ」
と考えます。

対して相手は
「怠け者」
「重要な存在である私も評価してくれない」
「間違ったことをやっている。不正だ」
と責めるわけですね。

このように、いったん箱に入れば、「自分は被害者、相手は加害者」という視点になり、自分のことは悪く思えず、相手を一方的に攻撃するようになるのです

問題点② 現実を見る目がゆがめられる

箱に入り、自分を正当化し、相手を加害者だと思い込めば、現実を見る目がゆがめられます。

「相手は加害者だ」という意識を強めるため、他人の欠点をおおげさに扱おうとします

また「自分は悪くない」と思いを強めるため、自分の長所を過大に評価してしまうのです

ケイトとブライアンという親子の例を見てみましょう(『自分の小さな「箱」から脱出する方法』参考)。

ケイトはバリバリのキャリアウーマンで、仕事をしっかりとこなしています。

ブライアンはケイトの18歳の息子です。ブライアンはしょっちゅう夜遅くに帰ってきています。

もしケイトが箱に入り、ブライアンを物としてみていたら、どうなるでしょうか?

まずケイトは、夜遅くに帰ってくるブライアンを責めるでしょう。「いつもこんな遅くに帰ってくるなんて、何を考えているの!」と。

そして、ブライアンを紛れもない加害者にするために、欠点をあげつらうわけです。「無責任な子、厄介者、礼儀知らず」だと。

ブライアンが本当に無責任で礼儀知らずかといえば、そうではないかもしれません。学校ではきちんとしているかもしません。

しかし現実を見る目がゆがめられているため、無責任としか思えない。いえ、そう思い込もうとしてしまっているのですね。

また、ケイト自身、「自分は悪くない」、自分を被害者だと思うために、

「私は仕事をしっかりとやり、仕事の責任を果たしている。家庭での責任もそう」
「私は正しいことをしている。公正だ」

と見なすのです。

ケイトにも もちろん 落ち度があることはあるでしょう。仕事は確かにしっかりとしているが、家庭での責任がおろそかになってしまうこともある。

しかし現実を見る目がゆがめられているので、欠点は見えず、自分の長所を過大に評価してしまうのですね

これが2番目の問題点です。

問題点③ 他の人たちも箱の中に入れてしまう

最後は、自分が箱に入り、自己正当化することで、他者も箱の中に入れてしまうことです。

ケイトとブライアンの例でいえば、ケイトから一方的に責められたブライアンは、どう思うでしょうか?

「お母さんを悲しませて申し訳なかった。これからは早めに帰るようにしよう」となるでしょうか?

残念ながらそうはなりませんね。

ケイトの言うことを聞くどころか、

「こんなに責められる覚えはない。自分は悪くない。こんなことを言うお母さんこそ悪い。もう少し優しくしてくれてもいいのに。なんて口うるさくて、独善的なんだ」

と反発し、ブライアン自身も箱に入ってしまい、ブライアンもまた自分を正当化するのですね

素直に言うことに従うのは相手の正しさを証明してしまうことになるため、うんと遅く帰るようになってしまうのです。

こうなると、事態は悪化の一途をたどってしまいます。

このように箱に入ることで悪循環が生じてしまうのですが、次回、このメカニズムをさらに詳しく見ていきます。

まとめ

  • 箱に入る(=心が敵対的な状態になる)ことの問題点の1つ目は、自分を正当化する視点から見ることです。「自分は悪くない。自分は被害者だ」と思い、相手を「自分に被害をもたらす人、加害者だ」と見なし、一方的に攻撃するようになります
  • 問題点の2つ目は、現実を見る目がゆがめられることです。「相手は加害者だ」という意識を強めるため、相手の欠点をおおげさに扱い、自分の長所は過大評価してしまいます
  • 問題点の3つ目は、他の人たちも箱の中に入れてしまうことです。自分を正当化して相手を責めれば、相手は相手で自らを正当化し、こちらを責めてくるでしょう

続きの記事はこちら

してほしいことを実はさせないようにしている?“共謀”のメカニズム-箱の心理学に学ぶ 人間関係の悩み解決のメソッド6
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この記事を書いた人
南 雄一郎

2011年 金沢大学工学部 卒業

大学では機械工学を専攻するなか、悩み解消のヒントや生きる指針を教える仏教に強い関心を持ち、仏教講演会に多数参加しました。

また大学卒業後は仏教と親和性のある心理学にも興味を持ち、独学で学びました。

現在は東京都内でライターをしながら、対人関係の悩みを解消し、自立した生き方の実現を目的とした 仏教×心理学のワークショップを開催しています。

自主開催のワークショップは累計850回以上。

2018年 新潟県キャリアセンター様主催 キャリアコンサルタント フォローアップセミナーにて講師をつとめました。

NPC法人HMC協会 認定心理カウンセラー(セルフ資格) 。

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