『嫌われる勇気』がベストセラーとなり、それがきっかけで「承認欲求」という言葉を耳にすることも多くなったと思います。
承認欲求とは、他人から「ほめられたい、よく思われたい」という欲求のことですね。
承認欲求が満たされないと、自分はここにいてもいいんだろうか?と不安になってしまいます。
ビクビクしたり、あるいは承認されないことにイライラしたりもするでしょう。
反対に承認欲求が満たされると、ここにいても大丈夫だという気持ちになり、安心できますね。
しかし私達は常に他人から承認されるわけではありませんね。他者から認めらなくて苦しくなるときも、どうしてもあるでしょう。
そんなとき、承認欲求とどう向き合えば安心できるのでしょうか?
記事の内容を動画でもご紹介しています
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承認を求める人は“ぜんまい仕掛けの人形”と同じ?
アドラー心理学では、人間の抱えるもっとも根源的な欲求は「所属感」といわれます。
所属感とは、共同体の中で「私はここにいてもいいんだ」と思えること、です。
誰しも自分の住んでいる世界のなかで、安心したい、と思いますよね。
ではどうすれば共同体での安心を得られるのか?所属感が得られるのでしょうか?
それには周りから承認されれば、認められればいいのではないか、と思いますよね。
他者からほめられ、承認されれば、自分には価値があると感じて、安心できるようになるはずだと。
しかし他者から承認されれば、ずっと安心なのでしょうか?
それについて『幸せになる勇気』にはこう書かれています。
承認には、終わりがないのです。
他者からほめられ、承認されること。
これによって、つかの間の「価値」を実感することはあるでしょう。
しかし、そこで得られる喜びなど、しょせん外部から与えられたものにすぎません。
他者にねじを巻いてもらわなければ動けない、ぜんまい仕掛けの人形と変わらないのです。
(『幸せになる勇気』岸見一郎著 より引用)
他者からほめられ、承認されれば嬉しくなりますが、それはつかの間のことです。
他者からの承認がないまま時間が経てば、不満が出てきたり、不安になったりします。だから常にほめられ、認められる必要があるのですね。
しかしそれでは他者からねじを巻いてもらわないと動かない、「ぜんまい仕掛けの人形」と同じだ、と指摘されているのです。
強烈な表現ですが、自らを奮い立たせて動こうとせず、他者からの承認を待っているならば、そう言われても反論できません。
そのように外部から喜びを与えられる状態では、精神状態は常に不安定になってしまいます。
もっと安心して生きるにはどうすればいいのでしょうか?
他者からの承認を求めることなく、自らの意思で 自らを承認する
『幸せになる勇気』には、私達が目指すべき生き方がこのように書かれています。
他者からの承認を求めるのではなく、自らの意思で、自らを承認するしかないでしょう。
(中略)
「わたし」の価値を、他者に決めてもらうこと。それは依存です。一方、「わたし」の価値を、自らが決定すること。これを「自立」と呼びます。
(『幸せになる勇気』岸見一郎著 より引用)
わたしの価値を他者が決める、他者から承認を得て喜んだり安心したりするのは依存した生き方であり、安定した生き方にはなり得ません。
反対に、わたしの価値を自らが決定するのが自立した生き方なのであり、それがアドラー心理学で目指すべき生き方とされています。
自らがわたしの価値を決定できれば、他者からの承認、他者からの評価は問題にならなくなります。
とはいえ、承認欲求から離れ切れないのが人間なので、他者からの承認はまったく気にならなくなるわけではありませんが、自立--自分で自らの価値を決定する--ということを意識すれば、他者の評価はずっと気にならなくなるでしょう。
「自立=他者を無視する、自分勝手に振る舞う」は大きな間違い
自分で自分を承認できればいい、と聞くと、
「他者のことなんて どうでもいいってこと?自分勝手に振る舞っていいってこと?」
と思う方もいますが、もちろんそうではありませんね。
自立するためには、「自分は他者の役に立てている」という他者貢献感を持つことが欠かせません。
他者貢献感を持ってこそ、自分で自分の価値を決定することができます。
他者貢献感を持ち、自らの価値を自分で決定すれば、他人の評価を気にする必要はなくなる、ということですね。
実際に自分のやっていることが他者の貢献になっているかどうかを気にする必要もあります。
他者貢献のつもりで、やっていることが自己満足になっていたら、ニセの他者貢献感になってしまい、そこからは真の幸せや喜びを見出すことはできません。
本人に直接聞いてみたり、直接が難しければ第三者から話を聞いたり、客観的に貢献度がわかる指標を設けたりして、実際の貢献度を知り、本当の他者貢献感を持っていきたいですね。
まとめ
- 人間の根源的な欲求を「所属感」といい、人の共同体の中での安心感を求めています
- 人から認められたり、ほめられたりしてもその安心は一時的です
- 人に価値を決められるのが依存、自分で自分の価値を決めるのを自立といいます。自立すれば、他者からの評価は気にならなくなるのであり、アドラー心理学では自立した生き方が勧められています
- 自分で自分の価値を決めるには「自分はほかの人の役に立てている」と感じる他者貢献感を持つべき、と教えられています
引用した書籍
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