アドラー心理学といえば、性格のことがよく取り上げられています。
その自分の性格に悩んだことがない、という方はかなり少数だと思います。
「自分は暗い性格で、友人が少ない。あの人のように明るい性格になれたらいいのに…」
「私はすぐにカッとなって、いつも人間関係で失敗する。穏やかになるにはどうすればいいの?」
と、もし今が幸せでないとすれば、それは自分の今の性格には問題があるからであり、この性格を変えない限りは幸せになれない、と思っている方が多いのではないでしょうか。
性格を変えることなどできるのでしょうか?
またもし性格は変えられるものとすれば、なかなか変わらない理由は何なのでしょうか?
それら性格についての疑問に、アドラー心理学の観点からお話ししていきます。
記事の内容を動画でもご紹介しています
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性格は変えられる。しかし人は「変えない努力」をやっている
アドラー心理学では性格のことを「ライフスタイル」といわれています。
このライフスタイルは、果たして変えることのできるものなのでしょうか?
それについて、アドラー心理学のパイオニアであり、精神科医の野田俊作さんはこう語っています。
どんなに変な性格に育ってしまっても、いつでも修正できる。そのことを強調したいんです。
過去は現在を縛らない。過去なんか関係ない。
今ここで何を決断し実行するかだけが、我々の幸福への鍵なんです。
(『アドラー心理学を語る1 性格は変えられる』野田俊作著 より引用)
性格は自らが選び取ったものであり、仮に変わった性格を選び取ったとしてもそれは選び直すことができる・修正できる、というのがアドラー心理学の見方なのですね。
では、そんな修正可能なはずの性格(=ライフスタイル)を変えられずに悩んでいる人が多いのは、なぜなのでしょうか?
それについて野田さんはこう指摘しています。
私はこう思うんです。
性格は本当はとても変わりやすい。
ただ、人間は、自分の性格を変えないための能動的な努力を絶えずやっている。だから変わらない。
人間は一般に、自分の性格を変えたがらないということです。
「変わらない」「変えられない」のではなくて「変えたくない」のです。
(『アドラー心理学を語る1 性格は変えられる』野田俊作著 より引用)
「性格を変えたい! でも変えられない」のではなく、そもそも「変えたくない」のであり、「性格を変えないための能動的な努力を絶えずやっている」といわれています。
実際に「性格を変えたい」と思って野田さんのもとを訪れた人で、何度か心理療法をすると、「今と別の性格になるぐらいなら、今のままで結構です」と言って、性格を変えない人がいるのだそうです。
「性格を変えたい」というのは建前で、本心では「今の性格でなくなるなら、今のままでいい」と思っている、ということなのですね。
ではなぜ人は、意識的には「性格を変えたい」と思っていながら、性格を変えないための努力をやっているのでしょうか?
性格を変えない最大の理由は「保守的」だから
性格を変えようとしない、変えないための努力をしている最も大きな理由は、人間は「保守的」だからです。
保守的とはどんなことかについて、野田さんはこう言われています。
性格を変えるということは、危険を冒すということなんです。
今までの生き方を保っていくのであれば、ともかく何が起こるかはわかっている。
まったく新しい生き方をはじめるとすれば、何が起こるかまったくわからない。
大儲けかもしれないが大損かもしれない。
そんな大博打 には、めったに賭けないものですよ、人間は……。
(『アドラー心理学を語る1 性格は変えられる』野田俊作著 より引用)
性格を変えるとは、これまでの認知と行動のパターンを変える、ということです。今までと違った行動を取るということですね。
そうなれば、その先にどんな結果がやってくるかは、まったく想像つかないでしょう。
さらに人間は危険なことが起こると予測しがちなので、ネガティブな感情になりやすいです。
そうなると、そんな不安を抱えるくらいなら、たとえ不便であっても今の性格のままでいい、と思ってしまうのですね。
これまでと異なる、新しいことに挑戦するというのは、勇気のいることですね。
勇気がなければ怖気づいてしまい、挑戦する気持ちはしぼんでしまいます。
逆のことをいえば、勇気があれば、性格を変えることは可能だ、ということですね。
性格を変える鍵は「不安さ、不確定さを引き受ける勇気」
どうすれば性格を変えられるかについて、野田さんはスバリこう語っています。
不安さ、不確定さを引き受ける勇気を持たないと、性格は変えられない。
ということは逆に、次に何が起こるかわからないということを引き受ける勇気さえ持てば、性格は簡単に変わる。
(『アドラー心理学を語る1 性格は変えられる』野田俊作著 より引用)
不安さ、不確定さを引き受ける勇気を持つことができれば性格は変わる(しかも簡単に!)と断言されています。
ではそのような勇気を得るにはどうすればいいのでしょうか?
野田さんがカウンセリングで相手を勇気づけるためにされている2つのステップがあります。
それが
- 結末の予測
- 代替案を実行する
です。
これらは具体的にどういうことかについては次回、ご紹介していきます。
まとめ
- 性格(=ライフスタイル)は自らが選び取ったものであり、それは選び直すこともできます。いつでも修正は可能です
- 修正可能なはずの性格を変えられずに悩むのは、自分の性格を変えないための能動的な努力を絶えずやっているから、と教えられています
- 性格を変えないのは、人間は保守的であり、新しい生き方をするのに大きな抵抗を感じるからです
- 不安さ、不確定さを引き受ける勇気を持つことができれば、性格は簡単に変わります
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