性格について悩まれている方はとても多いと思います。
もし性格が変えられる方法があるなら、ぜひ知っておきたいですよね。
アドラー心理学では、性格のことをライフスタイルといい、ライフスタイルは自らが選び取ったものであり、ゆえに選び直すこと、修正することもできると教えられています。
ではどうして性格を変えられなくて悩んでいる人が多いかというと、性格を変えられないのではなく、「変えたくない」のであり、性格を変えないための能動的な努力を絶えず行っているから、といわれています。
なぜ性格を変えたくないのかといえば、人間は「保守的」であり、新しい生き方をすることへの不安、恐れがあるからです。
しかし反対からいえば、不安さ、不確定さを引き受ける勇気を持つことができれば性格は変わる、ということですね。
そこまでを前回の記事でご紹介しました。
前回の記事はこちら
今回は、アドラー心理学のパイオニアである野田俊作さんがカウンセリングで行っている、性格を変える勇気を得る2ステップ-
- 結末の予測
- 代替案を実行する
-を詳しく見ていきます。
記事の内容を動画でもご紹介しています
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勇気を得るステップ① 結末の予測
勇気を得る1つ目のステップが、「結末の予測」です。
結末の予測とは、「このままでやっていくと、結局どうなると思うか」と問いかける、ことです。
私たちは性格を変えないための能動的な努力をやっているのですが、実はその努力は本当はバカらしいこととわかれば、やらないようになるはずです。
そう思えるようにするのが「結末の予測」なのですね。
たとえば野田さんは、本当はご主人と仲良くなりたいのに、会うとつい罵ってしまって悩んでいる奥さんへ、こう言われています。
ご主人のことを 罵って暮らしている奥さんには、
「そうしてご主人を罵っていると、ご主人はあなたのことをいっそう好きになってくれると思いますか、それともだんだん嫌いになっていくと思いますか」なんて言う。
こういうテクニックを、「結末の予測」と呼んでいます。
こうして、今いるところの居心地が悪くなったら、変わろうという気が募ってくるでしょう。
(『アドラー心理学を語る1 性格は変えられる』野田俊作著 より引用)
このように結末を予測することで、不便さを嫌い、変わろうという勇気が湧いてくるのですね。
勇気を得るステップ② 代替案を実行する
結末を予測した後の次のステップは、「代替案を実行する」です。
代替案の実行とは、具体的によりよいと思われる行動を実行することです。
結末を予測することがまず大切なのですが、それだけではやはり性格を変えることはできません。
その後には、今までとは違った具体的な行動を起こさないといけないのですね。
野田さんもこう指摘をされています。
「今やっていることをやめなさい」という助言は意味がないんです。
「今やっていることをやめて、かわりにこうしなさい」って言ってあげないと、勇気がくじけてしまう。
(『アドラー心理学を語る1 性格は変えられる』野田俊作著 より引用)
「今やっていることをやめなさい」では意味がなく、それだけでは勇気はしぼんでしまうのです。
だから具体的な行動への助言が必要です。
先に紹介した、ご主人を罵る奥さんに対して、野田さんはこうアドバイスされています。
「主人を 罵るのをやめなさい」って助言しても、「それじゃいったいどうしろと言うのよ。黙って好きにさせておけって言うの!」と反撃されてしまうでしょう。
だから、たとえば、「ご主人を罵るかわりに、ご主人にうまく甘えてみませんか」と助言する。
(『アドラー心理学を語る1 性格は変えられる』野田俊作著 より引用)
現状を打開する代替案を考えて、着実に実行する。例でいえば、「ご主人に甘える」ことを実行するのですね。
もちろん、代替案を実行しても、いきなり望む結果が得られるとは限りません。
ご主人の立場からすれば、これまで自分のことを散々罵ってきた妻が突如として甘えだしたら、不審に思いますよね。気味が悪くなって、離れていくかもしれません。
しかし一度でも代替案を実行すれば、相手からこれまでと違った反応が得られます。
その反応を見て、また別のより良い代替案を実行すれば、現状はきっと良くなっていくはずです。
代替案を実行した人は、「こんな結果が得られるのなら、もっと早くやっておけばよかった」とさえ思うでしょう。
たった一度でもできれば、その後は簡単にできる
野田さんに、
「私は内気なたちで、言いたいことがあっても、いつもハッキリと言えません。どうしたら変われるでしょうか?」
と、性格を変えるためのアドバイスを求めた人がいました
それに対して野田さんはこう答えています。
一言で言いますと、トレーニングです。
今までハッキリと言えなかった場面で、一度でいいからハッキリと言ってみること。
人間の心というのは面白いもので、たった一度でもできれば、二度目三度目は簡単にできます。
一度もやったことのないことはとても難しいんです。
(中略)
一度身につけてしまえば、次からはとても楽にできます。
(『アドラー心理学を語る4 勇気づけの方法』野田俊作著 より引用)
一度でも実行すれば、それ以降の実行のハードルは下がり、やがては習慣化していけるのですね。
それは自転車に乗ったり、泳いだりすることと同じだとも言われています。
自転車に乗れるようになるまではとても難しいことのように感じられますが、いったん自転車に乗れるようになると、期間が空いても、また簡単に乗れるようになることと同じなのですね。
まず結末を予測して不確定さを受け入れる勇気を得て、そして一度、代替案を実行していただきたいと思います。
また、どのような代替案を実行するかについては、できる限り多くの方法を知っておくことが望ましいです。
手持ちのカードが多いほど、より有効なカードで勝負することができます(勝つことが目的ではありませんが)。
そこでぜひおすすめしたい代替案が、仏教で説かれる「六度万行(ろくどまんぎょう)」と「無財の七施(むざいのしちせ)」です。これらを知られると、代替案を考えるときにとても役に立ちます。
以前に詳しくご紹介したことがあったので、ぜひ目を通していただければと思います。
まとめ
- アドラー心理学では、ライフスタイル(=性格)は自らが選び取ったものであり、ゆえに選び直すことができると教えられています。しかし人間は保守的であるゆえ、性格を変えないでいます
- 「この先何が起こるかわからない」という不確定さを引き受ける勇気を持てば、性格は簡単に変わります。その勇気を得る方法が「結末の予測」です。「このままでいると、どうなるのか」と結末を予測することで、変わろうという勇気が得られます
- 結末を予測した後は、これまでの行動に変わる、よりよいと思われる新しい行動(=代替案)を実行することで、新しい生き方を始めることができます
- たった一度でも代替案を実行すれば、それ以降の実行のハードルは大きく下がり、二度目、三度目の実行は非常にやりやすくなります
引用した書籍
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