7/27(土)レポート 思い込みが実現し、ますます性格が変わらなくなるメカニズムとは-アドラー心理学に学ぶ“認知のゆがみ”の改善法3

勉強会主催の みなみ です。

週末の勉強会は、台風が接近しているという情報があったため、開催自体が難しいかもと懸念していましたが、勉強会の前後は大きな荒れはなく開催することができました。

今回のワークショップには、初めての方8名を含む11名の方にご参加いただきました!

今回は初めての方に多く来ていただき、嬉しい反面、いつも以上に緊張しましたが、ディスカッションも盛り上がり、満足していただいた方が多かったように感じます。

悩みの解消に、少しでもお役に立てれば嬉しく思います。

私自身も、みなさんのご意見、ご経験をお聞きしての気づきも多く、充実した時間となり、感謝の思いです。

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認知論とは?-人間は客観的な世界ではなく、主観的な世界に住んでいる

今回のテーマは、
ブッダとアドラー心理学に学ぶ「悪循環を引き起こす“認知のゆがみ”の改善法」
についてでした。

アドラー心理学に限って教えられていることではありませんが、それを理解する上で「認知論」を知ることが欠かせません。

認知論とは、物事の見方、受け止め方は人それぞれ、ということですね。

ベストセラー『嫌われる勇気』にはそれについて、

人は、客観的な世界に住んでいるのではなく、自らが意味づけをほどこした主観的な世界に住んでいる

と書かれています。

「自分の見方こそ間違いない、正しい」と私たちは思ってしまいがちですが、それはあくまで主観であり、私たちは独自の意味づけをしている、客観的な見方をしている人はいない、ということですね。

そのように独自な意味づけをするとき、それがポジティブな感情を生み出したり、前向きな行動を生み出すものであれば、問題はありません。

しかし誤った認知、考え方をしていれば、それがネガティブな感情や非建設的な行為へとつながり、悩みや苦しみを生み出してしまいます。

その誤った認知をさせるのが「統覚バイアス」であること、その統覚バイアスは具体的にはどのようなものかについて、前回、詳しくお話ししました。

前回の記事はこちら

3/16(土)レポート 認知を誤る原因「統覚バイアス」とは?-アドラー心理学に学ぶ“認知のゆがみ”の改善法2
勉強会主催の みなみ です。 今回のワークショップには、初めての方3名を含む6名の方にご参加いただきました^^ 気温の上がり下がりが大きく、残念ながら体調不良で...

統覚バイアスは、「自分の考えに一致するように外界の出来事に意味づけをする」ものであり、自分の考えと矛盾するデータはそもそも受け入れなくさせるものです。

自分の考えに反する事実が現れても、ゆがんだ形で受け取ったり、無視したりしてしまう。こうすることで、思い込みが強化されるのですね。

さらに、「環境との相互作用」によって思い込みはますます安定してしまう、といわれています。統覚バイアスと環境との相互作用とはどのようなことか、具体例を挙げてご紹介します。

環境との相互作用とは?-思い込みが実現するメカニズム

「環境との相互作用によって思い込みは安定してしまう」とは、どういうことでしょうか?

たとえば、「すべての人は私のことが嫌いだ」という思いを抱いていた男性がいたとします。

ところがその男性に、ある女性が「あなたのことが好きです」と告白してきたとします。

当然、男性は驚きますよね。その後に、男性はこの状況をどう考えると思いますか?

「すべての人は私のことが嫌いだ」という思い込みが強ければ、女性が自分を好きだと言ってくるなんてこと、考えられません。

そこで、自分の思い込みに合うような解釈をするわけです。

「この女性は、自分のことが本当に好きだから告白しているのではない。そんなことは決してありえない。ということはこの女性には下心がある。きっと結婚詐欺かなにかの悪いことだ」というように。

そんな自分の思いを、女性に言えばどうなるでしょうか?

男性に本心を伝えた女性は怒って、その男性のもとを去ってしまうでしょう。残念なことに、本当に嫌われてしまうのですね。

しかしその結果に男性は落ち込むどころか、「ああ、だまされなくてよかった」と安堵するのです。

このように思い込みが実現し、性格はますます安定してしまうのですね。

傍から見れば、この男性は、せっかくの機会を失い、しかもそれに安堵するなんて、なんと愚かなのだろうと感じるでしょう。

しかし私たちも自覚なく思い込みを抱いて(例:すべての人から私は嫌われている)、

それが実現するような行動をわざわざとり(例:「あなた、本当は私のことが好きではないでしょう!」と言う)、

その行動の結果に対してさらに思い込みを強めて(例:女性は自分のもとを去り、「ああ、だまされなくてよかった。やっぱり私を好きになる人なんていないんだ」と思う)、

またそれが実現する行動をとる…、という悪循環に陥ってしまうことが大いにあり得るのですね。

アドラーは、

環境が人間を形つくるが、一方、人間が環境を形づくる

と語っています。

私たちは生まれ育った環境の影響もあって意味づけの仕方や考え方を安定させていきます(=環境が人間を形づくる)。

その意味づけや考え方のとおりの行動によって、それが実現し、ますますその意味づけや考え方は正しいのだと思い込んでいく(=人間が環境を形づくる)ということですね。

誤った意味づけや考え方をしていれば、それを実現させる行動をとって、私たちを本当に不幸にしてしまうのです。

 

では、私たちを不幸にする思い込み、誤った認知にはどのような特徴があるのでしょうか。

次回は、「誤った信念の5つの特徴」をお話ししていきます。

まとめ

  • 心理学では認知論が説かれています。物事の見方・受け止め方は人それぞれであり、人は主観的な世界に住んでいる、ということです。仮に誤った認知をしていれば、気持ちも落ち込み、行動も後ろ向きになり、生きづらさを抱えてしまいます
  • 私達の認知を誤らせるのが「統覚バイアス-自分の考えに一致するように外界の出来事に意味づけをする」です。自分の考えに反する事実に対しても無視するか曲解するため、思い込みが強化されます。さらに環境との相互作用によって、思い込みはますます強くなるのです
  • アドラーは「環境が人間を形つくるが、一方、人間が環境を形づくる」と語っています。思い込みの通りに行動する(例でいえば、私はすべての人から嫌われている、だからこの人も私のことが本当は好きじゃないと思う)ことで、本当にその思い込みが実現し(女性から嫌われる)、思い込み通りの世界ができるのです

続きの記事はこちら

12/1(日)レポート 誤った信念の5つの特徴とは?(単純化と一般化、レッテル貼り)-アドラー心理学に学ぶ“認知のゆがみ”の改善法4
勉強会主催の みなみ です。 今年も1ヶ月を切りましたね。 今回のワークショップには初めての方4名を含む、7名の方にご参加いただきました。 心理学だけでなく仏教...

引用した書籍

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

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ブッダとアドラー心理学コンテンツレポート
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この記事を書いた人
南 雄一郎

2011年 金沢大学工学部 卒業

大学では機械工学を専攻するなか、悩み解消のヒントや生きる指針を教える仏教に強い関心を持ち、仏教講演会に多数参加しました。

また大学卒業後は仏教と親和性のある心理学にも興味を持ち、独学で学びました。

現在は東京都内でライターをしながら、対人関係の悩みを解消し、自立した生き方の実現を目的とした 仏教×心理学のワークショップを開催しています。

自主開催のワークショップは累計750回以上。

2018年 新潟県キャリアセンター様主催 キャリアコンサルタント フォローアップセミナーにて講師をつとめました。

NPC法人HMC協会 認定心理カウンセラー(セルフ資格) 。

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