心理学&仏教ワークショップ主催の みなみ です。
このブログでは、ワークショップの内容を少しずつご紹介しています。
今回は、「劇的な変化を起こす“外向き思考”」の8回目です。
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雰囲気を良くし、業績の向上をもたらす「外向き思考」
「外向き思考」とは、シリーズ累計150万部以上を売り上げている『管理しない会社がうまくいくワケ』という本の中で紹介されているマインドセット(=物事の見方、考え方)のことです。
自分の小さな「箱」から脱出する方法 ビジネス篇 管理しない会社がうまくいくワケ
そのマインドセットとは、「他者のニーズや目的に関心を持ち、他者を理解しようとする」見方をいいます。いわば、人を“人”として見ているのです。
人を人として見るなんて当たり前ではないか、と思われるかもしれませんが、これができている人は多くはありません。
多くの人が陥りがちな「内向き思考」
私たちは、これとは反対のマインドセットである「内向き思考」になりがちなのです。
内向き思考は、「他者を、自分のニーズや目的を満たしてくれるかどうかで見ている」マインドセットです。いわば、相手を人ではなく“物”として見ています。
自分の都合のよい相手なら利用しようとし、自分に都合が悪い相手なら邪魔者、敵としてさえ見るのが、内向き思考なのです。
私たちはどうしても自分のニーズを優先し、自らの正当性を主張してしまいがちなので、内向き思考になりやすいといえるでしょう。
しかし内向き思考は、相手のマインドセットもまた内向き思考に変えてしまい、お互いが自己正当化し、相手を責めるという状態(「共謀」といわれます)をつくりだしてしまいます。
そうなれば、職場や家庭の雰囲気は悪くなり、お互いの思いやりを失わせ、職場なら生産性を落としてしまうのですね。
ですから、外向き思考へと踏み出すことが、チーム全体の雰囲気を変え、業績を向上させるために必要なります。
前回はその外向き思考に踏み出すための3つのステップと、このステップを取り入れたフォード・モーターの元CEO アラン・ムラーリー氏の取り組みを紹介しました。
前回の記事はこちら

外向き思考のための3つのステップは、以下のものでした。
- 相手のニーズ・目的・課題に目を向ける
- 相手の役に立つよう適した努力をする
- 相手に与えた影響を評価する
まず大切なのが、相手のニーズ・目的・課題に目を向ける、ということです。
年間170億ドル超の赤字を抱えてフォード・モーターの現状を打破しようと、ムラーリー氏は週2回のミーティングを実施し、各部門の幹部たちに業務状況をチャートに書き込ませ、ミーティングに出席させました。
提出されたチャートはどれも緑色(=計画通りに業務は進んでいることを意味する)に塗られていました。
ところが会社全体の業績は落ちる一方だったのです。
なぜこうなったかといえば、幹部たちはみな内向き思考に陥り、自分の地位を守ることでいっぱいいっぱい。自分は正しい、会社の業績が良くないのはあの部門のせいだ、弱みを見せてはならない、という思いから、業務状況を正しく伝えなかったのですね。
ムラーリー氏の施策は始めのうちは大きな進展はしませんでした。しかしこの後、事態が大きく変わることが起こったのです。
転機を迎え“赤のチャート”の持ち込み
当時、フォードの国外事業を担当していたのが、マーク・フィールズ氏です(のちのCEO)。
フィールズ氏は、リリースを直前に控えた新型車 フォード・エッジのテスト車両に欠陥があるという情報を受け取りました。
開発責任者であったフィールズ氏は苦悩します。
欠陥が見つかったことを正直に報告すれば、彼は立場を追われることになります。しかし欠陥を隠して新型車をリリースした場合も、やがてはその隠蔽が明らかになり、責任を負うことになるでしょう。
フィールズ氏は報告すべきかどうか熟考を重ね、報告をすることを選びました。そしてチャートを赤で記入し、次のミーティングで提出することにしたのです。
ミーティングに臨んだフィールズ氏の行く末は?
4週目のミーティングに、フィールズ氏は 幹部で唯一 緑で記入されていないチャートを持って乗り込みました。
彼の順番が来たとき、フィールズ氏はつとめて平然としていて、新型車 フォード・エッジに関するチャートを出し、こう言いました。
「エッジについては、ご覧の通り、状況は赤です」
誰もが沈黙していました。
フィールズ氏が予想していたのと同じことを、その場にいた誰もが思ったのです。彼の運命は決まったも同然だ、と。
しかし、ただひとり例外がいました。そして、そのひとりが拍手をはじめたのです。
「マーク」と呼びかけ、拍手をしながら ほほえみかけたのはムラーリー氏でした。
「君の状況を見る力はすばらしい」
さらに彼は残りのメンバーのほうを向いて、 こう問いかけました。
「この件について、マークの助けになれる者はいるかな?」
これが、外向き思考のレッスンの開始の合図となったのです。
このムラーリー氏の問いかけに、これまで緑だと偽ってチャートを提出し続けていた周りのメンバーはどのような反応を示したのでしょうか?
『管理しない会社がうまくいくワケ』にはこう書かれています。
ムラーリーの問いかけに誘われるように、 フィールズの同僚の何人かが勢いよく提案を持ちだした。
ある者は、過去に同じような問題を起こした別の車種を知っているので、すぐに情報を提供すると言ってくれた。
またある者は、急いで最高のエンジニアたちをオークビルに集め、必要ならば設計変更の手助けをさせると申し出てくれた。
ほかにも同様の申し出がいくつも出てきた。
(『管理しない会社がうまくいくワケ』より引用)
これまでチャートを緑だと偽り、自分の立場を守ることばかりで、関心を示さないどころか業績不振の原因をフィールズ氏とさえ見なしていた他部門の幹部が、次々と支援の手が差し伸べたのですね。
この件をきっかけに、フォード・モーターの状況は大きく好転することになります。
それについては次回、詳しくご紹介します。
まとめ
- 人を“人”として見るのが「外向き思考」、人を“物”として見ているのが「内向き思考」です。相手を、自分のニーズを満たしてくれるかどうかで判断し、自分に都合が悪ければ邪魔者として見るのが内向き思考であり、人間関係の問題の原因とされています
- 外向き思考に踏み出してこそ、相手との関係が良好となり、家庭や職場の雰囲気も良くなります。その外向き思考に踏み出すステップが以下の3つです
- 相手のニーズ・目的・課題に目を向ける
- 相手の役に立つよう適した努力をする
- 相手に与えた影響を評価する
- フォード・モーターでは、幹部たち全員が内向き思考に陥り、業績が悪化していました。CEOに着任したアラン・ムラーリー氏はマインドセットを変える施策を始めましたが、当初は奏功しませんでした
- 国外事業を担当していたマーク・フィールズ氏が意を決して、ミーティングで新型車の欠陥を切り出したところ、ムラーリー氏の他の幹部への呼びかけをきっかけに、同僚たちがフィールズ氏への手助けを申し出たのです。これが外向き思考のレッスンの始まりとなりました
続きの記事はこちら

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