勉強会主催の みなみ です。
『幸福優位 7つの法則』を通して、心理学の新しい分野である「ポジティブ心理学」とは何か、
ポジティブ感情を高めて幸福になるにはどうすればいいかについて、続けてご紹介しています。
今回はその8回目です。
幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論
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心の持ちようを変えれば若返る?“マインドセット”の現実を変える威力
『幸福優位 7つの法則』は、ハーバード大学のポジティブ心理学者 ショーン・エイカー氏によって書かれたものです。
タイトルにある「幸福優位」とは、エイカー氏がポジティブ心理学の研究で発見した「幸福優位性(ハピネス・アドバンテージ)」のことです。
「幸福優位性」とは、人は幸福感を覚えているとき、すなわち気分がポジティブであるときに自己成長が促され、能力が最大限発揮され、結果的にものごとがうまくいくことをいいます。
幸せが中心にあって、成功はその周りを回っている、ということです。
その幸福優位性を活かすための法則を、エイカー氏は以下の7つに分けて教えられています。
- 幸福優位 7つの法則
- ハピネス・アドバンテージ
- 心のレバレッジ化
- テトリス効果
- 再起力
- ゾロ・サークル
- 20秒ルール
- ソーシャルへの投資
前回は、2番目の「心のレバレッジ化」に関して、マインドセット(=物事の見方、考え方)を変えたことで、現実にもポジティブな変化が起きた実験例をご紹介しました。
それはハーバード大学 心理学教授 エレン・ランガー氏の行った実験で、実験参加者に「いまは20年前である」という認識を持ってもらい、20年前を再現したシチュエーションで過ごしてもらう、というものです。
すると実験の結果、実験参加者の75歳の男性に、それまでの常識では考えられなかった老齢になってからの心身のポジティブな変化が生じたのです(体力・姿勢・視力・認知能力・短期記憶で改善が見られ、さらには外見さえも若返ったとわかりました)。
この実験から、心の持ちようを変えれば、現実を変える力は飛躍的に大きくなり、実際に変化が起こるとわかります。
実験の詳細を紹介した、前回の記事はこちら

年齢に関するマインドセットが身体に与える影響は、イェール大学の有名な研究でも見られました。
それは、中年の男女を対象にした20年にわたる研究で、年齢を重ねることをポジティブにとらえている人と、年齢を重ねることに対して悲観的な人の、健康状態の違いを調べたものです。
研究の結果、年齢を重ねることをポジティブにとらえていた人は、ネガティブにとらえていた人より平均寿命が7.6年も長かったとわかりました。
ちなみに、運動を欠かさず、タバコも吸わず、血圧もコレステロール値も正常値を保つなど、健康維持のために重要なことをきちんと守った人と、そのような節制をしない人との平均寿命の差は約4年であるといわれています。
マインドセットがいかに大きな影響を与えるか、マインドセットの現実を変える力がいかに大きいかが、この研究からもわかります。
ではなぜマインドセットの変化が、現実にもこれほどのポジティブ(あるいはネガティブ)な変化をもたらすのでしょうか。
その理由の1つに、神経科学者 マーセル・キンズボーン博士が説明する「期待効果」があります。それはどのようなメカニズムで、どのような効果なのでしょうか。
なぜマインドセットを変えるだけで現実が変わる理由「期待効果」とは?
「期待効果」とは、私たちが次に起こるだろうと予測することに、脳が反応するようにできていることをいいます。
しかも脳が生じる反応を、キンズボーン博士は「現実世界のできごとによって生じるのと同じくらいに本物でありうる」と指摘されています。
これは「プラセボ(偽薬)効果」といわれることもあります。
患者さんに砂糖の丸薬(偽薬)を、何らかの症状を軽減する働きがあると説明して飲ませると、多くの場合は効果を表し、ケースによっては本物と同じくらいに効くこともある、というものです。
プラセボ効果を調べる実験を行った研究者の中には「プラセボ効果が痛みをコントロールする効力は、本物のアスピリンやコデインなどの薬(ともに鎮痛作用のある薬)の55%から60%である」と言う人もあります。
心の状態を変えただけで(自分は本当の薬を飲んでいると考えただけで)、症状を消失させるほどの力が発揮されるのです。
これは、「この薬にはこんな効果がある」という期待に脳が反応して、実際に身体に変化を生じせるからであり、しかもそれは本当の治療薬を飲んだときと同じくらいの反応を生じさせることもあるのですね。
偽薬に関するもの以外で、この期待効果が顕著に表れた研究に、コロンビア大学の心理学者 アリア・クラム氏と、先で紹介したエレン・ランガー氏が共同で行った、7つのホテルの清掃員を対象にした研究があります。
ホテルの清掃員を半分に分け、片方のグループには「この仕事によって、毎日かなりの運動をすることになる」と伝えました。
具体的には「掃除機をかける身体の動きは、心肺機能を高める体操と同じ効果がある」というような説明をしていったのです。
他方のグループには何も伝えませんでした。
数週間後、「仕事は運動効果がある」と伝えられたグループの清掃員は、実際に体重が減り、コレステロール値も下がっていたのです(何も伝えられていないグループの清掃員には変化は見られませんでした)。
いつもより余分に働いたわけでもなく、仕事以外の運動をしていたわけでもありません。変わったのは、自分の仕事をどのように捉えていたかだけでした。
「仕事は運動効果があり、健康によい影響を与える」というマインドセットを持ったことで、脳がそれに反応し、実際に身体の健康にポジティブな変化が起こったのですね。
この研究結果を受けてエイカー氏は
日々の行動を自分の心がいかにとらえているかが、その行動自体よりも現実を決定する
と、マインドセットの持つ可能性の大きさを語られています。
日々の行動のポジティブな面に注目し、それを意識して実行することで、マインドセットの持つプラスの影響を大いに享受することができるのですね。
次回は、仕事のマインドセットが、実際の業績や自分の能力に与える影響をご紹介していきます。
まとめ
- ポジティブ心理学者 ショーン・エイカー氏が発見したのが「幸福優位性(ハピネス・アドバンテージ)」です。人は幸福感を覚えているときに能力が発揮され、結果的にものごとがうまくいく。幸福が中心にあって、成功はその周りを回っているのです
- 心の持ちよう(マインドセット)を変えれば、現実を変える力もまた飛躍的に高まり、実際に変化が起こることがわかっています(年齢を重ねることをポジティブにとらえる→健康になる など)。これは「期待効果(私達の予測することに、脳が反応して身体に変化を生じさせる)」によるものと説明されています
- 日々の行動を自分の心がいかにとらえているかが、その行動自体よりも現実を決定する、といわれています。行動のポジティブな面に注目してそれを実行すれば、プラスの影響を受けられるのです
続きの記事はこちら

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