人に好意的になるための実践法②「人に感謝する」「人を称賛する」-生きづらさを解消する 自己評価メソッド45

勉強会主催の みなみ です。

『自己評価メソッド』を通して、不安や恐れなどの生きづらさを解消するにはどうすればいいのか、そのための自己評価の高め方について、続けてご紹介しています。

今回はその45回目です。

自己評価メソッド―自分とうまくつきあうための心理学

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人を批判せずに、受け入れるための実践法

『自己評価メソッド』は、フランスで人気の精神科医 クリストフ・アンドレ氏によって書かれました。

こちらの記事では、『自己評価メソッド』で紹介されている、自己評価をよくする方法を以下の4つのパートに分けてお話ししています。

  1. 自分を受け入れる
  2. 自分との関係を改善する
  3. 他人との関係を改善する
  4. 行動の仕方を改善する

前回は、3番目の「他人との関係を改善する」の中の、人に好意的になるための実践法をご紹介しました。

人に好意的になるための4つの方法

「人から受け入れなかったときの対処法」や「承認欲求との向き合い方」などの受動的な関わり方、

それらより能動的な「他人を信頼するための実践法」や「他人を受け入れるための実践法」よりも、「人に好意的になること」はさらに能動的な関わり方であるといわれています。

その方法とは具体的に、以下の4つのものです。

  1. 人に優しくする
  2. 人に寛大になる
  3. 人に感謝する
  4. 人を称賛する

前回はこのうち、「人に優しくする」「人に寛大になる」方法をお話ししました。

人に優しくすることの利点・自己評価との関係

人に優しくすることで、相手が知っている人の場合はその人との関係がよくなり、知らない人である場合も、自らの気分がよくなり、幸せな気持ちになります。

しかし自己評価に問題がある人は、人に認められることを目的にして優しくしすぎたり、
そもそも優しさへの誤解(「優しさは弱さの証である」など)があって、人に優しくすることは難しいです。

人に優しくする実践法

人に優しくする機会は、
「挨拶を交わすのに加え、近況を少し詳しくたずねてみる」
「ひとりでいる人を見かけたら、話しかけて、別の人を紹介する」など、
いくらでもあります。

そのような「できるところで、できる限り優しく」することが勧められています。

人に寛大になることの利点・自己評価との関係

人に寛大になることもまた、人との関係・自らの気分がよくなることにつながります。
また、寛大さは、相手にも寛大な対応をしてもらえる<保険>にもなり得る、といわれています。

しかし、人に優しくする場合と同様に、自己評価に問題があれば、人に寛大になることもまた難しいです。
自己評価に問題があると、裏切られることをより恐れるため、相手が最初に寛大にならない限り、自分は寛大になろうとはしないからですね。

人に寛大になる実践法

寛大になるための実践法として、2つが紹介されていました。

①寛大さとは相手が期待しているより多くを与えることだと知る

寛大さとは、相手が期待しているより、少し多くを与えることです。

仕事でも人間関係でも、そのちょっとした努力の上乗せ・プラスアルファの気遣いを心がけてみましょう。

②ともかく寛大になって結果を見てみる

寛大になれば、周囲との関係は自然とよい方向へ進んでいきます。まずはともかく、寛大になってみましょう。

前回の詳細はこちら

人に好意的になるための実践法①「人に優しくする」「人に寛大になる」ことの利点・具体的な方法-生きづらさを解消する 自己評価メソッド44
勉強会主催の みなみ です。『自己評価メソッド』を通して、不安や恐れなどの生きづらさを解消するにはどうすればいいのか、そのための自己評価の高め方について、続けて...

今回は、人に好意的になる方法の「人に感謝する」「人を称賛する」についてお話ししていきます。

人に好意的になるための4つの方法

③人に感謝する

人に感謝することの利点

人に好意的になるための方法の3つ目が「人に感謝する」です。

人にしてもらったことに感謝をすることには数え切れない利点がある、といわれています。

利点① 心が穏やかになり、幸せになれる

人が感謝の気持ちを持つと、「心が穏やかになり、幸せになれる」ことが、多くの研究が証明しています。

その幸せな気持ちは、自己評価によい影響をもたらします。

利点② 帰属意識が強まる

「自分がこうなれたのは、まわりの人のおかげだ」と思えることで、社会やグループの一員だという気持ち(=帰属意識)が強くなります。

帰属意識が強まることで自己評価は強化されるため、これもまた自己評価をよくする、といわれています(自己評価の栄養源である「“人から愛されている”という気持ち」が高まるからですね)。

利点③ <物質主義的な態度>から自由になる

さらなる利点として、<物質主義的な態度>から自由になることが挙げられています。

<物質主義的な態度>とは、「成功や名声をはじめとする自分が持っているものは、自分ひとりの力で手に入れたものだ」と考え、その考えにもとづいて物事の判断をしていることです。

特に自己評価の高くてもろい人は、自分が価値ある人間であると思いたいために、<物質主義的な態度>をとりがちです。

しかし、そのように<所有>にこだわると、相手との関係が悪化しかねず、自己評価に悪影響がもたらされます。

それとは反対に「自分が持っているものは、人の力を借りて得たものだ」と思い、<感謝の気持ち>を持てれば、所有にこだわることで起きる 他者との無用な争いがなくなって、自己評価がよくなるのに役立ちます

人に感謝するための4つの実践法

では、人に感謝をするためには、具体的にどうすればいいのでしょうか。

4つの実践法が紹介されています。

実践法① 自分の成功を歴史的に考える

何かに成功したとしても、それは自分が一から築いたものではありませんね。その分野でほかの人が築き上げてきたものがあったからこそ、自分も成功できたといえます。

自分の成功の価値をおとしめる必要はありませんが、自分の成功は<その分野でこれまで努力してきたい人々>の系譜に連なっていることを心にとめるようにしておこう、と勧められています。

実践法② ほんの小さなことにでも感謝する習慣をつける
  • 何かで人が微笑んでくれた
  • ドアの扉を押さえてくれた
  • 落としたものを拾ってくれた

など、ほんの小さなことにでも感謝をする習慣をつけるようにしましょう。

小さなことに感謝することで、「いつでも、誰もがそんなことをしてくれるわけではない」と、あらゆることが当たり前ではないと思えるようになり、感謝の気持ちも持ちやすくなります。
感謝の気持ちを持てば、さらに気分がよくなりますね。

実践法③ 毎日、寝る前に今日一日、優しくしてもらったことを思い出す
  • 心のこもったメールをもらった
  • にこやかに微笑みかけてくれた
  • ちょっとした気遣いを見せてくれた

など、「今日は誰がどんなふうに優しくしてくれただろうか」を寝る前に思い出して、感謝の気持ちを新たにすると、心が和やかになると教えられています。

実践法④ 直接、面識のない人にも感謝する

過去に活躍した偉人(『自己評価メソッド』では、音楽家のバッハが取り上げられていました)の功績や、その功績を伝えてきた人たちに対しての感謝を気持ちを持てば、

「私達は、これまで生きてきた人類のほとんどとつながっている」

という実感を持てるようになります。

④人を称賛する

人に好意的になる方法の4つが、「人を称賛する」ことです。

人を称賛することで得られる利点として、以下のことが挙げられています。

人を称賛することの利点

利点① 自分の限界を認めることで向上心が高まり、グループの一員であることに誇りを感じる

人を称賛するという態度は、

自分の限界を素直に認める」とともに、
自分にはできないけれど、そんな素晴らしいことができるのを見るのは、同じ人間として誇らしいと感じる

というものです。

自分の限界を認めることで、さらに努力をして自分を高めようという気持ちがわき起こります。

また、同じグループの一員であることに誇らしさを感じることで、自分の価値も感じられるようになります。

いずれも自己評価によい影響が与えられるのですね。

利点② お手本にできる

上記の利点①は、特に自分とは関わりのない分野で活躍している人に対して得られる場合が多いです。

自分が関わりのある分野では、「お手本にする」ことができます。

能力に限らず、性格でも行動でも、その人の素晴らしいところを称賛し、お手本にして努力をすれば、自分を高めることにつながりますね

その結果、自己評価はよくなっていきます。

人を称賛することと、問題のある自己評価との関係

このように、人を称賛することで自己評価にもプラスがもたらされますが、
もともと自己評価に問題があると、人を称賛するのは難しいといわれています。

自己評価に問題があれば、自分よりも優れた人を見ると、自分が劣っているのを見せつけられたような気がして 落ち込んだり、むしろ相手の欠点を探して引きずり下ろしたくなったりしてしまいます。

また、称賛を通りこして「理想化」してしまう場合もある、といわれています。

自己評価の低い人は、相手を理想化して屈従する傾向にあります。

また、高くてもろい自己評価の人も、相手を理想化することが多いといわれています。「私のパートナーは特別に優れていなければならない」と思って、相手に完璧さを求めるのですね。

しかし相手を理想化すれば、相手が何かのことでつまずいた場合、同情ではなく軽蔑を抱いてしまい、やがては関係が悪化してしまいます。

人を称賛するための2つの実践法

では、相手を称賛するには具体的にどうすればいいのでしょうか。2つの実践法をご紹介します。

実践法① 人を称賛することは、自分の先入観を変える力になると知る

人間関係がうまくいかないのは、相手に対して<悪い先入観>を抱いているからということも多い、といわれています。

本当は相手にそれほどの落ち度はないのに「あの人はこんな人だ」と決めつけることで、相手の悪い部分がどんどん目について、関係が悪化してしまうのですね。

しかし相手のよいところに気づいて「称賛する」と、それをきっかけに関係が好転することもあります。称賛には、偏見をとりのぞく力もあるのですね。

称賛にはそのような力があると知れば、相手のいいところを見つけようという気持ちも高まっていくでしょう。

いったん、「相手は初めて会う、新しい人だ」と思って、相手のよいところに目を向けてみるのがお勧めです

実践法② まわりに注意して、人のよいところを見逃さないようにする

「人を称賛できる」というのは、それだけ、ほかの人のよさを「見る目がある」といえます

私達はどうしても相手の悪い部分に目がいきます。それは、危険を察知する脳の領域のほうが強い力を持っているからです。

ゆえに放っておけば、人の短所ばかりが見えてしまいます。それでは人との関係も悪化し、自己評価に悪影響が出てしまいますね。

だから、人のよさを見る目を鍛えることが大切です。

そこで、人のよいところを見逃さないように、まわりを注意して見てみましょう。
そして、相手のよいところを見つけたら、すかさず称賛する。すると、相手との関係もよくなりますし、自分の気分もよくなりますね

「称賛する」ことは、「相手に心を開く」ことでもある、といわれています。

あなたが相手に心を開けば、相手もまた心を開いて、あなたに近づいてくるでしょう。
そうなれば、自己評価はどれほどよくなるかしれませんね。

人々のなかに自分の居場所を見つける

他人との関係をよくするパートの最後に、「人々のなかに自分の居場所を見つける」ことが紹介されていました。

「自己評価」と「他者との関係」とのつながり

人は社会的な動物であり、ほかの人とよい関係を築くことができなければ、<よい自己評価>を持つことは難しいです。
人に背中を向けても、あるいは人の背中を踏みつけても<よい自己評価>は持てませんね。

それは、自己評価の栄養源となる<人から愛されているという気持ち>と<自分には能力があるという気持ち>を比べれば、<人から愛されているという気持ち>のほうがより重きが置かれているから、ともいえます。

(<人から愛されているという気持ち>のほうが倍ほど自己評価によい影響を与えるという実験があることもご紹介しました)

そのため、自己評価をよくするには、人と競争するのではなく、人との関係をよくすることです

誰かとケンカをしたり、仲違いをしたりしたときのことを振り返れば、自己評価は確実に下がっていたことが思い出されるでしょう。

自己評価と帰属意識

自己評価は、社会やグループに対する<帰属意識>と密接に結びついている、ともいわれています。

自分が社会やグループの一員としてふさわしくないと思えば(帰属意識が感じられなければ)、あるいはその一員として認められていないと感じれば、自己評価は下がります。

反対に、自分はこのグループの一員として認められていると思い、周囲とのつながりを感じていると、豊かな自分をつくり上げることができます。
小さな自分にはこだわらず、社会やグループの一員として自分を考えられるようになります。

何よりも、自分は一人ではないという安心感が生まれます。

結果として、<自己評価>はよいものになっていくのです。

<社会やグループへの帰属>を大切にすることで、<自己評価>と<対人関係>の間に好循環の円環構造もでき、その2つはさらによくなっていく、といわれています。

それは、帰属意識が感じられて自己評価がよくなれば、グループのメンバーに対しても、自分に対するのと同じように好意的な目を向けるためです。
そうなれば、対人関係はさらによくなって、それがまた自己評価によい影響を与えるのですね。

帰属の究極の形「大洋感覚」とは

ここで<帰属>といわれるところは、

一人ひとりが自由でいて、しかも1つのものとして結びついている<ゆるやかなグループ>といわれています。

そのようなグループには、いくつでも帰属することができます(帰属するグループはある程度多いほうが、自己評価が傷ついたときの苦しみを軽減しやすくなります)。

私達はそれぞれのグループのなかで自分の居場所を見つけることができます。

グループのなかで大切な人ととして認められ、
自分もまたそのグループの仲間を大切にする…。

これほど自己評価にとってよいことはないでしょう。

1つ1つのグループは、川を流れる水のように自由に形を変えながら、やがては社会という大河、世界という海に注いでいきます。
私達はそのなかで、世界と1つになっているという間隔を味わうことができるのです。

それは、「自分が世界の一部であることを自覚する」ともいわれています(作家のロマン・ロランはこれを「大洋感覚」と呼びました)。

この感覚こそ、<他人との関係>のなかで「自己評価をよくする」究極の形、といえるのですね。

 

以上が、3番目の「他人との関係を改善する」についてでした。

次回から、4つ目のパートである「行動の仕方を改善する」についてお話ししていきます。

まとめ

  • 人に好意的になる方法の3つ目が「人に感謝する」ことであり、感謝には以下のような、さまざまな利点があります
    • 心が穏やかになり、幸せになれる
    • 帰属意識(社会やグループの一員である、という気持ち)が強まる
    • <物質主義的な態度(「これは自分ひとりの力で手に入れたものだ」という考えと、それにもとづく行動)>から自由になる
  • 人に感謝するための実践法として4つをご紹介しました
    1. 自分の成功を歴史的に考える
    2. ほんの小さなことにでも感謝する習慣をつける
    3. 毎日、寝る前に今日一日、優しくしてもらったことを思い出す
    4. 直接、面識のない人にも感謝する
  • 人に好意的になる方法の4つ目が「人を称賛する」こと。人を称賛することで、自分の限界を認めるとともに、その人と同じグループであることに誇りを感じます。あるいは、その人をお手本にして自分を高められます。いずれも自己評価はよくなるのです
  • 人を称賛するための実践法としては2つをご紹介しました
    1. 人を称賛することは、自分の先入観を変える力になると知る
    2. まわりに注意して、人のよいところを見逃さないようにする
  • 人間は社会的な動物であるので、人との関係をよくしなければ、自己評価もよくなってはいきません。反対に、関係がよくなれば帰属意識が強まり、自己評価がよくなります。それにより相手をより好意的に見て、さらに関係がよくなる…、という好循環に入っていけるのです
  • 帰属の究極の形が、一人ひとりが自由でいて、しかも いくつものゆるやかなグループと結びついていると感じること、「自分が世界の一部であると自覚すること」です。これは「大洋感覚」と呼ばれています

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