勉強会主催の みなみ です。
『セルフ・コンパッションのやさしい実践ワークブック』を通して、
「自己への思いやり(=セルフ・コンパッション)の効果と身につけ方」について、続けてご紹介をしています。
今回はその4回目です。
『セルフ・コンパッションのやさしい実践ワークブック』は、アメリカのセラピスト(心理療法家)のティム・ディスモンド氏によって書かれました。
セルフ・コンパッションの概念とその効果、実践の仕方がわかりやすく解説されています。
セルフ・コンパッションとは「自己への思いやり」「自分に対する慈悲」と訳されます。
自分に対して思いやりを持ち、優しく接することで、自己批判の苦しみを和らげ、心のバランスを保つ効果があります。
また、セルフ・コンパッションには苦しいときだけでなく、順調なときも、その人生の喜びを最大限味わえる効果もあるのです。
前回は、セルフ・コンパッションと自尊心との違いについて詳しくお話ししました。
前回の記事はこちら
似たようなものだと思われているセルフ・コンパッションと自尊心ですが、明確な違いがあります。
まず自尊心は、それが高まるほど他者を批判する傾向にありますが、セルフ・コンパッションは高まるほど他者への思いやりが増すことがわかっています。
自己への思いやりのある人は他者と自分とを比較することなく、自分と同様に、他者を価値ある存在と認められるのです。
※ナルシシズム(自己陶酔)と自尊心には相関関係があったのに対し、セルフ・コンパッションとの相関関係はゼロだったことも研究でわかっています
また自尊心は傲慢になりやすく、他者からのフィードバックを受けつけないのに対し、セルフ・コンパッションは現状認識も正確で、自己改善も怠らないといわれています
自尊心のプラス面は含まれるものの、マイナス面が含まれないのがセルフ・コンパッションなのですね。
自尊心 | セルフコンパッション |
高まるほど他者を批判する傾向にある | 高まるほど他者への思いやりが増す |
傲慢になりやすい | 自己改善を怠らない |
今回は、自尊心のほかに、セルフ・コンパッションと混同しやすい概念と、その特徴をお話ししていきます。
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セルフ・コンパッションと混同しやすい4つの概念と、その特徴
ディスモンド氏が挙げられている、セルフ・コンパッションと似たように思われている概念が、以下の4つです。
- わがまま(self-indulgence)
- 自己憐憫(self-pity)
- 受動性(passivity)
- 自己中心性(egotism)
それぞれの特徴と、セルフ・コンパッションとの違いを見ていきましょう。
①わがまま(self-indulgence)
「わがまま」の特徴は、自分自身や社会を有意義に変えていくための努力をしたがらない、といわれています。
対してセルフコンパッションは、自分が成長すること、成長するための努力を価値あることだと思えています。
②自己憐憫(self-pity)
「自己憐憫」は、過度に不幸を感じ、自分はいつも犠牲者、運命には逆らえない、と思っていることです。
それに対してセルフ・コンパッションは、現状を受け入れつつ、自分には大きなことを成し遂げる力がある、と思えるのです。
③受動性(passivity)
「受動性」は、状況を変えるための具体的な行動をしないことです。
対してセルフ・コンパッションは、自分や他者を助ける行動が自然に表れます。
④自己中心性(egotism)
「自己中心性」は、他の人と比べて自分が優れていると考え、自分のニーズしか見えていないことです。
それに対してセルフ・コンパッションは、周りの人と自分を比べようとはせず、人への思いやりを欠くどころか、他者への思いやりを豊かにしていることです。
以上がセルフ・コンパッションと似たような概念と、その特徴、セルフ・コンパッションとの違いでした。
特徴 | セルフ・コンパッションとの違い | |
わがまま | 自分自身や社会を有意義に変えていくための努力をしたがらない | 自分が成長すること、成長するための努力を価値あることだと思う |
自己憐憫 | 過度に不幸を感じ、自分はいつも犠牲者と思う | 現状を受け入れつつ、自分には大きなことを成し遂げる力があると思う |
受動性 | 状況を変えるための具体的な行動をしない | 自分や他者を助ける行動が自然に表れる |
自己中心性 | 自分が優れていると考え、自分のニーズしか見えていないこと | 周りの人と自分を比べようとはせず、他者への思いやりを豊かにする |
見比べると、セルフ・コンパッション、自己への思いやりはいかに生きやすく、幸せで、周囲へもいい影響を与えるかがわかりますね。
「思いやり回路」が強化される!脳科学からみた、セルフ・コンパッションの確かな効果
このセルフ・コンパッションの効果は、神経科学の面からも明らかになっています。
世界的にも指導的立場にあるアメリカの神経科学者 リチャード・デビッドソン氏の研究によって、セルフ・コンパッションのトレーニングをすると、脳の「思いやり回路(幸せホルモンといわれるオキシトシンと、鎮静作用のあるホルモン オピエートが分泌される)」が強くなることがわかりました。
セルフ・コンパッションのトレーニングを実践するほど思いやり回路が強化され、不安や抑うつ、怒りなどの感情が和らぎ、幸福感が高まるのです。
一長一短には身につかず、続けての実践を要しますが、実践を続ければ誰でもセルフ・コンパッションが身につき、その恩恵を得ることができるのですね。
では具体的にどんなことが自分への思いやりを育むことになるのでしょうか。次回はセルフ・コンパッションの具体的なトレーニング方法をご紹介していきます。
まとめ
- 自尊心以外の、セルフ・コンパッションと似たような概念が以下の4つです。いずれもセルフ・コンパッションとは異なり、生きづらさにつながります
- わがまま(self-indulgence)
- 自己憐憫(self-pity)
- 受動性(passivity)
- 自己中心性(egotism)
- 神経科学の研究からも、セルフ・コンパッションには確かな効果があると明らかになっています。セルフ・コンパッションのトレーニングを実践すれば「思いやり回路」が強まり、ネガティブな感情がやわらぎ、幸福度が高まるのです
続きの記事はこちら
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