勉強会主催の みなみ です。
『自己評価メソッド』を通して、不安や恐れなどの生きづらさを解消するにはどうすればいいのか、そのための自己評価の高め方について、続けてご紹介しています。
今回はその15回目です。
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自分を批判しないための対策-自己への思いやり(セルフ・コンパッション)を持つ
『自己評価メソッド』は、フランスで人気の精神科医 クリストフ・アンドレ氏によって書かれました。
『自己評価メソッド』には、
- 自己評価を構成する要素
- 「よい自己評価」と「悪い自己評価」の特徴、それに至るメカニズム
- 自己評価をよくしていくためのメソッド
などが詳しく書かれています。
こちらの記事では、よい自己評価を持つためのメソッドを4つのパートに分けてご紹介しています。
- 自分を受け入れる
- 自分との関係を改善する
- 他人との関係を改善する
- 行動の仕方を改善する
前回は、2番目のメソッド「自分との関係を改善する」に関して、仏教の観点からの自己批判をしないための方法をお話ししました。
自己批判は、自分に対して絶対的な要求をすることから生じます。その対策として勧められているのが「自己への思いやり(セルフ・コンパッション)」を持つことです。
友人に対して持つような思いやりを自分に対しても持つことが「セルフ・コンパッション」であり、それによって自分の存在自体を断罪することを防げます。
人格全体ではなく、あくまで自分の行為が悪かったと思えるようになるのです。
また、自己への思いやりは「人間である以上、落ち度があるのは当たり前」という認識から始まる、ともいわれています。
欠点のない、完璧な人などはおらず、人間であれば誰にでも欠点があり、失敗もします。そのような認識を持てれば、自分に対して寛大になり、過ちを認めた上で、自己成長のための努力をしていけるのです。
仏教でもまた、人間というのは「凡夫(ぼんぶ)-煩悩にとらわれ、苦しみ悩んでいる存在」であると教えられています。
欲の心によって自己中心的なふるまいをしたり、怒りによって衝動的に行動して後悔したり、愚痴(嫉妬や恨み)の心の醜さに嫌悪感を抱いたりすることもあるでしょう。
このように煩悩によって過ちや失敗を犯し、苦しんでいるのが人間とわかれば、落ち度があるのは当たり前と思えて、不完全な自分を受け入れることができます。
その上で、同じ過ちを繰り返さずに、少しでも向上していくにはどうすればいいかと考え、実行に移していくことが大切なのですね。
仏教の観点からの自分批判しない実践法の詳細はこちら(前回の記事)
今回から、「自分との関係を改善する」の中の「自分のコンプレックスと戦う」についてお話ししていきます。
コンプレックスを抱えることの問題点、自己評価への影響
自己評価を悪くしている大きな要素の1つが「コンプレックス」です。
完全な人間はおらず、誰でも劣った点・欠点を抱えて生きています。しかしその劣った点がすごく気になり、生活にも支障が出るほど苦痛を感じるようになれば、それは「コンプレックス」であるといわれています。
人間はあらゆることに対してコンプレックスを抱きます。
例として、「教養がない」「きちんと話ができない」「知性に欠ける」ことにコンプレックスを持っている人、
また、容姿に関して「太っている」「髪が薄い」「背が低い」「筋肉がついていない」ことにコンプレックスを抱えている人がいると挙げられています。
コンプレックスを持てば、相手の優れた点が目につくようになり、その人と自分とを比較してコンプレックスが刺激され、「私は劣っている…」と思いをますます強めてしまうのです。
コンプレックスがあることの問題点-行動する自由を奪ってしまう
このようにコンプレックスを抱えると、生活にどのような支障が出てくるのでしょうか。
「自分には教養がない」と思っている人であれば、教養がないと周囲に知られないように、口を開かないようになります。
また、人と会わなければコンプレックスを刺激されなくてすむため、人に会うことそのものを避けるようにもなるでしょう。
このようにコンプレックスのために行動を制限しているということは、おしゃべりを楽しむ自由や、外出して楽しむ自由を自分から奪っていることになるのです。
コンプレックスのために行動を避け、不自由さを感じれば、自己評価にもさらに悪影響を与えてしまいかねませんね。
ではそんなコンプレックスと戦い、自己評価を傷つけないようにするには具体的にどうすればいいのでしょうか。
コンプレックスを戦うための実践法をご紹介していきます。
コンプレックスと戦う実践法-相対化することで、コンプレックスは軽減される
コンプレックスと戦うときの前提として、コンプレックスを完全に治療する絶対的な方法はない、とアンドレ氏はいわれています。
欠点があるのが人間であり、ゆえにコンプレックスもまた完全になくし切ることはできないのですね。
しかしそれを抑える方法はある、ともいわれています。それは「コンプレックスを相対化する」ことです。
コンプレックスはあくまで自分が苦痛だと感じているものなので、相対化する(=距離を取って眺める、客観視する)ことができれば、苦痛を和らげ、こだわる気持ちを小さくすることができるのですね。
そのコンプレックスを相対化する方法をお話ししていきます。
①コンプレックスを持つにいたった原因を理解する
コンプレックスを抱くようになった原因はさまざまだと思います。
例えば、
両親から「お前はダメだ」と言われて育ったために、自分の存在そのものにコンプレックスを抱くようになった、
両親自身が自分の存在にコンプレックスを持っていた、
周囲の人から欠点をからかわれたことで、そんな欠点を持つ自分をダメだと思うようになった、ということが思い当たるかもしれません。
あるいは、自分が欠点だと思っていることが原因で人に受け入れられなかったことがあり、それ以来、その欠点を過剰に気にして、苦痛も感じるようになったことかもしれませんね。
その原因を考えた上で、
「いまも同じように苦痛を感じるだろうか。
いろいろな経験してきたことで、感じ方に変化はないだろうか」
「他の人も同じような経験をしたことがあるだろうか。
その人はそれをどう受け止めているだろうか」
「本当にそれは自分にとって耐え難いコンプレックスなのか。
見方を変える出来事や学びはなかっただろうか」
のように問いかけ、自分と対話することで、コンプレックスはある程度、相対化することができるといわれています。
②すべてをコンプレックスのせいにしない
コンプレックスが強ければ強いほど、うまくいかないことをコンプレックスのせいにしてしまいがちになります。
たとえば、「教養がない」ことにコンプレックスを感じていた場合、仕事がうまくいかないことも、友人との関係がうまくいかないことも、「私に教養がないから、こんなことになるんだ」と、すべてコンプレックスのせいだと考えてしまうでしょう。
確かにコンプレックスによってうまくいかないこともありますが、それは本当はわずかであり、コンプレックス以外に原因がある場合が多いのです。
それをすべてコンプレックスのせいだとすれば、コンプレックスへの意識をますます強めてしまい、問題そのものも解決はされず、状況は悪いまま、もしくは悪化します。
そうなれば、この悪い状況はやっぱりコンプレックスのせいだ、と思ってしまいますね。
ゆえに何かがうまくいかなかったら、ひとまずコンプレックスからは離れるようにし、うまくいかなかった本当の理由は何なのか、考えてみることが勧められています。
コンプレックスが原因でないとわかれば、問題の解決にも近づき、コンプレックスも軽減されるのです。
次回は、コンプレックスと戦う実践法の3つ目以降をご紹介していきます。
まとめ
- 自己評価を悪くする要素の1つが「コンプレックス」です。生活に支障が出るほど欠点を苦痛に感じれば、それはコンプレックスであり、コンプレックスを持てば行動の自由を奪ってしまうなど、自己評価にも悪影響が出てしまいます
- コンプレックスを完全に治療する絶対的な方法はないものの、それを相対化することで、苦痛を和らげることができます。そのための方法を今回は2つ、お話ししました
- コンプレックスを持つにいたった原因を理解する-
どのような経験からコンプレックスを抱くようになったかを考え、今の視点から改めて当時の状況を捉え直すことで、コンプレックスをある程度、相対化することができます - すべてをコンプレックスのせいにしない-
コンプレックスによって生じる問題は限られており、すべてがコンプレックスによるものではありません。ひとまずコンプレックスから離れ、本当の原因を見つけることで、問題の解決に近づき、コンプレックスも軽減されます
- コンプレックスを持つにいたった原因を理解する-
続きの記事はこちら
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