仏教から知る、「他人の評価が気になる…」不安への対処法-三毒追放9

仏教では「人生は苦なり」と説かれています。

生きていれば、もちろん楽しいと思えること、喜びもありますが、人生の荒波もまた次々とやってきます。

長く生きるほど、これまで経験したことのない苦しみも多くなっていきます。

喜びがあふれ、充実感が得られることもあるものの、それらの喜び・充実感も長くは続かず、むなしさ・空虚感が大きくなってしまいます。

このように「人生は苦なり」を実感されている方も多いでしょう。

なぜ人生が苦しみに染まってしまうのでしょうか。それには原因がある、と教えられています。

仏教で説かれるその原因は「無明(=煩悩)」です。

私たちを苦しませ、悩ませるのが煩悩ですね。中でも特に恐ろしいのが「三毒」といわれる怒り愚痴(嫉妬心や恨みの心)の3つの心です。

残念ですが、その三毒を無くし切ることはできません。

しかし無くせないなら無くせないで、それを認めたうえで三毒との適切な向き合い方を知ることは、より快適に幸せに生きるために大切です。

前回まで、

「因果応報」
「因縁生起」

という仏教の教えを通して、欲と愚痴の向き合い方についてご紹介しました。

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今回は、「信念」という観点から、三毒との向き合い方、対処法をお話しします。

記事の内容を動画でもご紹介しています

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三毒への対処法③ 信念を持つ

他人の目が気になる… 名誉欲で苦しむ人間

欲や怒り、愚痴の心によって無駄に時間を使ってしまい、本当に使うべき大事なことに時間を使えなくなってしまっては、後悔ばかりが残ってしまいます。

特に時間の浪費につながりやすいのが、他人からよく見られるためにしていることです。その行為の根底には「名誉欲」があります。

欲の心のなかでも特に強い欲は、この名誉欲といわれます。 「人からほめられたい、悪く言われたくない」という心です。心理学では承認欲、承認欲求ともいわれます。

この、人から嫌われたくないという名誉欲によって必要以上に人の目を気にしてしまい、相手に気を遣いすぎたり、相手の依頼を断れなかったりして、私たちは気に病むことが多くなります。

もちろん、人に迷惑をかけず自分勝手な行動をしないよう、ある程度は人からの評価は気にすべきです。
しかし度を越して他人の目を気にして自己を抑えるあまり、精神的に苦しくなっている方もおられるでしょう。

そんな名誉欲に振り回されずに生きていくには、どうすればいいのでしょうか。

名誉欲への対処法-大きな信念に身を委ねること

名誉欲に振り回されないために重要なのが、「“信念”を持つ」ことです。

「信念」について、『道を開ける』(デール・カーネギー著)という本にはこう書かれています。

自分よりも遥かに大きな信念に身を委ねることだ

そうすれば、どんな敵と出会おうが、どんな攻撃を受けようが、まったく関係なくなってしまう。信念以外のことは、どうでもよくなってしまうからだ。

大きな信念に身を委ねることによって、信念以外のことはどうでも良くなり、人からどう言われようが関係なくなります。
必要以上に他人の目を気にする状態から脱却し、不安を打ち消すことができるのですね。

ただ、その信念といっても、自己中心的な、他人のためにならないような信念では、誰からも支援を受けられずに自らが苦しむことになってしまいます。
他人の幸せにも貢献し、自分も幸せになれる。そんな信念を持ちたいですね

仏教には「自利利他(じりりた)」という言葉があります。

「利他」とは「他(=他人)を利する(幸せにする、喜ばせる)」、
「自利」とは「自(自分が)利す(幸せになる、喜ぶ)」ということで、これこそ仏教の目指すべき精神といわれます。

名誉欲への対処法②-みんなから褒められる人などいない、と知る

また、他人の評価という点について、お釈迦様は『法句(ほっく)経』というお経で、こうおっしゃっています。

過去にも、今にも、未来にも、皆にて謗る人もなく、皆にて褒むる人もなし

たとえ、自利利他という素晴らしい精神、信念を持っている人であっても、その人のことを良く思わない人は必ずいます。

お釈迦様のような偉人でさえ、当時のインドの人の3分の1がお釈迦様を非難していた、といわれます。

人からたとえ悪く言われたとしても、自分の存在を否定する必要はないのです。
批判されてもすべてを真に受けずに、「これは自分でも本当に悪いな」と思ったところだけを切り取って、あとのことは忘れてしまいましょう。

大きな信念に身を委ねていれば、他人の評価に寛容で、名誉欲に振り回されなくなり、自分の信念に無関係な頼み事には断りを入れ、自分のやるべきことに集中することができるのです

 

次回は、今回でも少し触れた「利他」という観点での、三毒への対処法をご紹介します。

まとめ

  • 仏教では、人間には名誉欲(ほめられたい、悪く言われたくないという心)があると教えられています。この名誉欲によって必要以上に他人の目を気にし、気に病むこともあります
  • 名誉欲に振り回されないためには、信念を持つことです。大きな信念に身を委ねることで、信念以外のことはどうでもよくなり、人の目を気にしなくなります。その信念も、他者への貢献という信念であると、自らも幸せになれます
  • そもそも自分を悪く言う人は必ずいるのであり、そんな人がいても、自分の存在価値がなくなるのではありません。批判は真に受けずに、「本当にこれは自分が悪いな」と思うところだけを聞きましょう

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仏教で悩みを解消する!ブッダのすすめる「利他」の実践-三毒追放10
仏教では「人生は苦なり」と説かれています。人生の本質は苦しみといわれているのです。 なぜ人生が苦に染まってしまうのでしょうか。その原因は「無明(=煩悩)」である...

引用した書籍

道は開ける 文庫版

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この記事を書いた人
南 雄一郎

2011年 金沢大学工学部 卒業

大学では機械工学を専攻するなか、悩み解消のヒントや生きる指針を教える仏教に強い関心を持ち、仏教講演会に多数参加しました。

また大学卒業後は仏教と親和性のある心理学にも興味を持ち、独学で学びました。

現在は東京都内でライターをしながら、対人関係の悩みを解消し、自立した生き方の実現を目的とした 仏教×心理学のワークショップを開催しています。

自主開催のワークショップは累計850回以上。

2018年 新潟県キャリアセンター様主催 キャリアコンサルタント フォローアップセミナーにて講師をつとめました。

NPC法人HMC協会 認定心理カウンセラー(セルフ資格) 。

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