勉強会主催の みなみ です。
今回のワークショップには、初めての方3名を含む、5名の方にご参加いただきました。
アドラー心理学だけでなく、仏教に関心のある方も参加され、仏教の素晴らしさを少しでもお話ししたいと思っている自分にとっては、より嬉しい気持ちになりました。
今回のメインテーマである「課題の分離」は、すでにご存知の方もおられ、日常で実践を心がけているものの、なかなかうまくいってない、という声をお聞きしました(前回のワークショップでも、そう言われていた参加者の方が多かったです)。
それについて、自分の学びをや経験を通して、具体的な伝え方、接し方をお話しし、自分にとっても新たな気づきが得られ、感謝の思いです。
今後の良好な関係の構築の一助になれば、と願っています(>_<)
記事の内容を動画でもご紹介しています
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他者との関係を良好なものに変える「課題の分離」
今回の勉強会のテーマは
アドラー心理学に学ぶ「対人関係を激変させる“課題の分離”」
についてでした。
私自身がアドラー心理学を知るようになったきっかけが、『嫌われる勇気』です。
世界で累計500万部以上を売り上げているベストセラーですね。この記事を見られている方で、読まれている方も多いと思います。
この『嫌われる勇気』のなかで、私が初めに「なるほど!」と非常に納得し、ぜひ実践していきたいと思ったのが、「課題の分離」でした。
承認欲求が満たされないことや、相手からの批判、レッテル貼りなど、対人関係で悩んでいる私達にとって、この課題の分離が実行できれば対人関係を激変させられると言われているのです。
課題の分離とは、自分の課題と相手の課題とを切り離す、ということですね。
ここで課題とは、
「あることの最終的な結末が誰にふりかかるのか」
「あることの最終的な責任を誰が引き受けなければならないか」
というものです。
自分の課題とはなにか、相手の課題はなにかを考えて、相手の課題に介入しないようにする、また自分の課題に相手に踏み込ませないようにすることで、対人関係のトラブルを避け、関係を良好な方向へ進ませることができるのですね。
具体的な例を挙げてお話しした課題の分離とはなにかについての記事は、以下をご参照ください。
「課題の分離とは?その手順と、やってはならない『課題への介入』」に関する記事はこちら

課題の分離に関連して知りたい“他者貢献感”-精神的に健康になれるキーワード
この課題の分離に関連して、「他者貢献感」についてもお話ししました。
他者貢献感とは「自分が他の人の役に立てている、と感じている状態」のことをいいます。
たとえ他者から称賛を浴びなくても、他者からの承認が得られなくても、「自分が役に立てていれば、それでいい」と主観的に思えているのが、他者貢献感が持てている状態です。
私達が生きていく上で、他者への貢献は欠かせませんね。共同体のなかに存在している限り、自分勝手に生きていくことはできませんし、そうしようとすればトラブルが生じます。
その他者への貢献をしたときに、「お礼を求める、承認を求める」というのは、相手の課題に介入することになり、相手はなおさらお礼を言おうとせずに、自分はイライラし、フラストレーションが溜まってしまう…、となります。
そんなときには他者貢献感を持つことで、他者の課題に介入することなく、自己完結し、精神的に健康になれるのですね。
相手の課題 | 自分の課題 |
お礼を言うかどうか、承認するかどうか | 他者貢献感を持つ(役に立てていればいい) |
前回は、仏教の観点から、他者貢献・親切をしたときの大切な心がけ「三輪空寂」についてお話ししました。
仏教でも、アドラー心理学と同じように他者貢献の実践と、貢献感を持つこと(見返りを求めないこと、執着しないこと)が勧められています。
前回の記事はこちら

今回は、他者貢献感を持つことと「自分の価値」との結びつきについて、お話ししていきます。
貢献感を持つことで“自分の価値”を感じられる
他者貢献感を持つことで、他者との関係は自己完結し、精神的な健康にもつながります。
さらに貢献感を持つことで、自分の価値を感じて、自分を認める、受け入れることもできるようなるのです。
これについてアドラーは
私に価値があると思えるのは、私の行動が共同体にとって有益である時だけである。
と語っています。
自分の行動が他者の役に立っていると感じるときに、自分の価値・幸せを感じ、さらなる貢献をしていこうという勇気が持てるのですね。
他者貢献は、相手が喜ばれるだけでなく、自分が人間としての価値を感じ、幸せになることにも結びつくのです。
神経症(今でいえば不安障害にあたります)で悩んでいるある患者さんが、「どうすればこの苦しみから抜け出すことができるでしょうか?」と、アドラーにたずねたそうです。
それに対してアドラーは
他の人を喜ばせることです。
『自分に何ができるだろうか?』『どうすれば他の人に喜んでもらえるだろうか?』と考え、それを行動に移すことです。
(『道は開ける』より引用)
と言い、一日一善を勧めたといわれています。
患者がアドラーの言うとおりに実行したところ、わずか2週間で神経症から回復したそうです。
もしこの患者が自分のことで思い悩み続ければ、ますます自分には価値がないと思い、症状が悪化していったでしょう。
反対に、他者に関心を向けて、他の人を喜ばせるための行動に時間を使うことで貢献感を持つことができ、そこから自分の価値を見出せたことで、神経症の症状が和らいていったのではないか、と推察されます。
自分のことで悩んでいるときこそ、周囲に目を向け、他者貢献に踏み出すことを実践していきたいですね。
他者貢献と聞くと、大それたこと、難しいことと感じられるかもしれませんが、仏教を説かれたお釈迦様は、どんな人にも心がけさえあれば実行できる、素晴らしい他者貢献を7通り、教えられています(「無財の七施」といいます)。
以前の記事でご紹介しましたので、こちらもぜひご参照ください。

次回は、自分の課題に介入させないための「自己尊重」の実践の仕方をお話しします。
まとめ
- これができれば対人関係が激変する、といわれているのが課題の分離です。最終的な決定権があるのは誰か、最後に責任を引き受けるのは誰かを基準に課題を分離し、相手の課題に介入しないことで、トラブルを避け、関係を良好にしていくことができます
- 他者にした貢献に対して、承認を求めるのは課題への介入となります。承認を求めるのではなく、他者貢献感(私は役に立てている、と感じている状態)を持つことで、自己完結し、精神的に健康になれるのです
- アドラーは、私の行動が共同体に有益である時に自分に価値があると思える、と語っています。ゆえに他者貢献に踏み出し、貢献感を持つことで、自分の価値を感じて幸せになることができるのです。神経症の患者さんが一日一善を実行したところ、2週間で病状が回復したという記録もあります
続きの記事はこちら

引用した書籍
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