仏教を説かれたお釈迦様は、「人生は苦なり」とおっしゃっています。お釈迦様が言われる通り、生きていけばいろいろな苦しみがやってきます。
この「人生は苦なり」の原因は何でしょうか?
それは「無明(むみょう)」すなわち「煩悩」と教えられています。
煩悩の数は全部で108あり、いずれも私たちを苦しませ、悩ませるものです。
なかでも特に迷惑しているものが「三毒」といわれる、3つの煩悩です。
三毒とは
- 貪(とん)
- 瞋(じん)
- 癡(ち)
の3つです。
前回の記事では貪(=欲)の心について、その特徴や本性をお話ししました。
前回の記事はこちら
今回は、三毒の2番目であり、欲の心が邪魔されたときに出てくる瞋の心とは何か、お話ししていきます。
記事の内容を動画でもご紹介しています
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三毒の2番目「瞋」の心とは?
瞋とは、「瞋恚(しんい)」のことです。
瞋恚とは、今の言葉でいうと「怒りの心」のことをいいます。
怒りの心は、どんなときに出てくるでしょうか?
自分の欲が妨げられたとき、邪魔されたときに出てくるのが瞋恚の心と教えられています。
たとえば、楽しみに取っておいたデザートを家族の誰かに食べられたときに怒るのは、「食欲」が邪魔されたからです。
契約まであと一歩の商談を邪魔されて、「アイツのせいで!」と怒りが噴出するのは、「財欲」がもう少しのところで満たせなかったからですね。
恋人やご主人(あるいは奥さん)が思い通りに動いてくれないとイライラするのは「色欲」が元にあるからであり、大勢の人の前で恥をかかされたことで激怒するのは「名誉欲」が妨げられたからといえます。
満たそうとしていた欲が大きかったときほど、怒りの心も大きくなり、忘れられないものになります。
「ひどいことをされたのだから、腹を立てるのは当たり前だ」と思われるかもしれませんが、この怒りにはいくつかの恐ろしい特徴があります。
理性も教養も吹き飛ばす?怒りの心の恐ろしい特徴
怒りの心の特徴が、それが起きると「理性も教養も吹き飛ばしてしまう」ことです。
数学者であり、哲学者としても有名なピタゴラスは
怒りは無謀をもって始まり、後悔をもって終わる
と語っています。
「ここは怒っておいたほうがいいだろう」と、計画的に怒る、なんて人はいませんよね。
交渉術として、あえて怒りの表情を見せたり、語気を強めたりするテクニックがあるそうですが、そんな場合を除けば、いったん怒り出すと冷静ではいられなくなり、先が見えなくなってしまいます。
まさに無謀から始まるのが怒りですね。
理性も教養を吹き飛ばし、冷静なときには絶対にやらないようなこともやってしまいます。暴言を浴びせたり、相手を殴ったり叩いたりしてしまうのです。
そして、「なぜこんなことをやってしまったのか」と、必ず後悔を残すのですね。
どんな人でも怒りに身を任せた挙げ句、後悔した経験はあるのではないでしょうか?
テレビやインターネットのニュースで取り上げられる事件の発端は、この怒りの心でしょう。
気に入らない相手を罵ったり殴ったりした政治家や芸能人、スポーツ選手は、事ある毎に大きく扱われます。
いずれも、悲嘆に暮れている人ばかりです。
有名人以外でも、電車の中で肩がぶつかって頭に血が上り、殺人事件に発展したというニュースもあります。
怒りの炎が燃え上がると、見境のない言動を取り、最後は後悔する。これが怒りの恐ろしい特徴なのです。
自分より弱い相手に起きるのが「怒り」 では強い相手には?
また、怒りの心が起きるのは自分よりも弱い相手、ともいわれます。
自分よりも力が弱かったり、立場が下だったりする人に対しては怒りの心が起こって、ひどい言動を取らせるのです。
では、欲を妨げたのが自分よりも強い相手、立場が上の相手の場合はどうでしょうか?
上司に叱られて腹が立ったからといって、怒りのままに振る舞えば大変なことになりますね(怒りのままに振る舞って、本当に後戻りできない状態になることもありますが…)。
そんなときに出てくるのが、三毒の最後である癡の心です。
癡の心とは、どんな心なのか?
強い相手にはどんな心が起きるのでしょうか。
それについて次回、詳しくご紹介します。
まとめ
- 私たちを特に苦しめる3つの心が「三毒」です。その三毒の2つ目は「瞋恚」、怒りの心です。怒りは欲が妨げられたときに出てくる心であり、満たそうとしていた欲が大きいほど、怒りの炎は激しくなります
- 怒りの恐ろしさは、理性も教養も吹き飛ばし、冷静なときには絶対やらないこともさせてしまうことです。怒りは無謀に始まり、必ず後悔に終わります
- 自分よりも立場が下の相手には怒りとなり、立場が上の相手には癡の心が出てきます
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